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販路開拓の基本戦略:直売所・EC・卸・マルシェ…それぞれの特性と収益構造を理解する

はじめに

6次産業化で商品を作ったら、次は「どこで売るか」が最大の課題です。直売所、EC、卸、マルシェ…それぞれに手数料も客層も求められる商品特性も違います。「とりあえず全部やってみる」では、労力ばかりかかって利益が残りません。

大切なのは、各販路の収益構造を理解し、自社の商品・体制に合った販路ミックスを設計することです。本コラムでは、主要4販路の特性を整理し、どう組み合わせれば持続可能な売上が作れるかを、現場目線でお伝えします。

販路選択の基本的な考え方

販路を選ぶ前に、まず自社の状況を整理しましょう。

① 自社の現状を把握する

  • 生産能力:週・月にどれだけ作れるか
  • 在庫の持ち方:受注生産か、作り置きか
  • 賞味期限:短い(数日)か、長い(数週間〜数ヶ月)か
  • 価格帯:単価が高いか、低いか
  • 人員体制:自分一人か、家族・スタッフがいるか
  • 物流対応:発送作業ができるか、配送コストをどう吸収するか

② 販路ごとの「相性」を見極める

すべての販路が自社に合うわけではありません。商品特性・体制・目標利益に応じて、優先順位をつけることが成功の鍵です。

主要4販路の特性と収益構造

【販路①】直売所・道の駅

特徴

  • 地元客・観光客が中心
  • 対面販売ではなく、委託販売が主流
  • 商品を並べたら、あとは売場に任せる

収益構造

  • 手数料:売上の10〜20%(施設により異なる)
  • 価格設定:自分で決められる
  • 入金サイクル:月1〜2回の精算が一般的

求められる商品

  • 地域性・季節感がある
  • パッケージが目を引く(対面説明がないため)
  • 賞味期限が比較的長い(数日〜1週間以上)
  • 価格帯:500〜1,500円程度が中心

メリット

  • 初期投資が少ない(棚代・出店料が不要または低額)
  • 自分で接客しなくてよい
  • 地元での認知が広がる

デメリット

  • 売れ残りリスクは自己負担
  • 陳列スペースが限られる
  • 他の出品者との競合が激しい

向いている事業者

  • 生産量が安定している
  • パッケージや見せ方に工夫ができる
  • 定期的に商品を補充できる体制がある

【販路②】EC(ネット販売)

特徴

  • 全国の顧客にリーチできる
  • 24時間365日、販売機会がある
  • 自社サイト、楽天・Yahoo!などのモール、BASE・STORESなどの簡易ECがある

収益構造

  • 手数料
    • モール型(楽天・Yahoo!):売上の5〜15%+月額固定費
    • 簡易EC(BASE・STORES):売上の3〜5%程度
    • 自社サイト:決済手数料のみ(3〜4%)
  • 送料:顧客負担か、自己負担か(または一部負担)
  • 梱包資材費:1件あたり50〜200円程度

求められる商品

  • 写真・説明文で魅力が伝わる
  • 配送に耐える(割れ・潰れにくい)
  • 賞味期限が長い、または冷凍・冷蔵配送に対応
  • 価格帯:送料を考慮すると2,000円以上が望ましい

メリット

  • 地理的制約がない
  • リピーター育成がしやすい(メール・LINE配信)
  • 顧客データが蓄積できる

デメリット

  • 集客に時間とコストがかかる(SNS・広告が必要)
  • 梱包・発送作業が発生
  • 送料負担が大きい(特に単品・小ロット)

向いている事業者

  • 商品ストーリーや世界観を伝えたい
  • リピーター育成に力を入れたい
  • 発送作業を定期的にこなせる体制がある

【販路③】卸(小売店・飲食店への販売)

特徴

  • まとまった数量を定期的に納品
  • 小売店・カフェ・レストランなどが取引先
  • 自分で売る手間がかからない

収益構造

  • 卸値:小売価格の50〜70%が一般的
    • 例:小売価格1,000円 → 卸値600〜700円
  • 支払いサイト:月末締め翌月末払いなど、入金まで時間がかかる
  • 返品リスク:契約により異なる

求められる商品

  • 安定供給ができる(欠品が許されない)
  • 賞味期限が長い
  • ロット対応ができる(週◯個、月◯個など)
  • 品質が均一

メリット

  • 一度取引が始まれば、安定した売上が見込める
  • 自分で販売しなくてよい
  • ブランド認知が広がる

デメリット

  • 粗利率が低い(直売の半分程度)
  • 生産計画・在庫管理が必須
  • 取引先の倒産・契約終了リスク

向いている事業者

  • 生産能力に余裕がある
  • 安定供給できる体制が整っている
  • 粗利率が低くても、量でカバーできる

【販路④】マルシェ・イベント出店

特徴

  • 対面で直接販売
  • 顧客の反応がリアルタイムで分かる
  • 週末・月1回など、不定期開催が多い

収益構造

  • 出店料:1回3,000〜10,000円程度
  • 価格設定:自分で決められる
  • 売上:当日の天候・集客に左右される

求められる商品

  • その場で試食・説明ができる
  • 持ち帰りやすい(重すぎない、壊れにくい)
  • 価格帯:500〜2,000円程度(その場で買いやすい金額)

メリット

  • 顧客と直接対話できる(ファン化しやすい)
  • 商品の反応を即座に確認できる
  • SNSフォロワー獲得のチャンス

デメリット

  • 準備・当日対応・片付けに時間がかかる
  • 天候・集客に売上が左右される
  • 出店料が固定費としてかかる

向いている事業者

  • 商品のストーリーを直接伝えたい
  • テスト販売・新商品の反応を見たい
  • ファンづくり・ブランディングを重視

販路別の利益率を比較する

同じ商品でも、販路によって手元に残る利益は大きく変わります。

例:シフォンケーキ1個(単位原価470円)

販路 販売価格 手数料・経費 粗利益 粗利率
直売所 800円 120円(手数料15%) 210円 26%
EC 800円 190円(手数料5%+送料150円) 140円 18%
560円 0円 90円 16%
マルシェ 800円 50円(出店料を1個あたりに按分) 280円 35%

※送料・出店料の按分方法により変動します

ポイント

  • 粗利率が高い=良い販路ではありません
  • 卸は粗利率が低くても、まとまった数量が安定的に売れる
  • ECは送料負担が大きいが、全国にリーチできる
  • マルシェは粗利率が高いが、労力と時間がかかる

販路ミックスの設計

複数の販路を組み合わせることで、リスク分散と売上最大化を図ります。

① 成長段階に応じた販路戦略

【立ち上げ期】

  • 優先販路:直売所、マルシェ
  • 目的:顧客の反応を見る、認知を広げる、商品を磨く
  • 売上目標:月5〜10万円

【成長期】

  • 優先販路:直売所+EC、または卸1〜2社
  • 目的:リピーター育成、安定供給の仕組み作り
  • 売上目標:月20〜50万円

【安定期】

  • 優先販路:卸中心+EC、直売所は補完的に
  • 目的:効率化、利益率の向上
  • 売上目標:月50万円以上

② 販路ミックスの例

パターンA:少量多品種型(個人事業者)

  • 直売所 50%
  • マルシェ 30%
  • EC 20%

→ 自分のペースで作り、対面販売でファンを増やす

パターンB:安定供給型(法人・グループ)

  • 卸 60%
  • 直売所 30%
  • EC 10%

→ 卸で安定売上を確保し、直売・ECでブランド育成

パターンC:EC特化型

  • EC 80%
  • マルシェ 20%(認知・ファン獲得)

→ 全国展開を目指し、リピーター育成に注力


販路開拓の実務ステップ

① 直売所・道の駅への出品

  1. 施設に問い合わせ:出品条件、手数料、精算サイクルを確認
  2. サンプル持参:商品を見せて、担当者と相談
  3. 出品契約:必要書類(営業許可証のコピーなど)を提出
  4. 初回納品:少量から始め、売れ行きを観察
  5. 定期補充:売れ筋を増やし、動きの悪い商品は入れ替え

② ECサイトの立ち上げ

  1. プラットフォーム選定:BASE・STORES(簡単)、楽天・Yahoo!(集客力)、自社サイト(自由度)
  2. 商品撮影:自然光で、複数アングル
  3. 商品説明文:原材料、サイズ、賞味期限、保存方法、食べ方を明記
  4. 配送設定:送料、配送方法、梱包方法を決める
  5. 集客:SNS、ブログ、広告で認知を広げる

③ 卸先の開拓

  1. ターゲット選定:自社商品と相性の良い店舗をリストアップ
  2. アポイント:電話またはメールで商談の約束
  3. サンプル提供:試食・試用してもらう
  4. 条件交渉:卸値、納品頻度、支払いサイト、返品条件
  5. 契約・初回納品:書面で条件を確認し、納品開始

④ マルシェ・イベント出店

  1. イベント情報収集:自治体、商工会、SNSで情報を探す
  2. 出店申込:主催者に連絡し、出店料・条件を確認
  3. 準備:テント、テーブル、POP、釣銭、梱包資材
  4. 当日販売:笑顔で接客、名刺・チラシ・SNS案内を配布
  5. 振り返り:売上、顧客の反応、改善点を記録

販路ごとの成功ポイント

直売所で売れるコツ

  • 目立つパッケージ:棚に並んだとき、手に取られやすいデザイン
  • POP活用:「地元◯◯産」「今週限定」など、一言で価値を伝える
  • 定期補充:欠品させない、鮮度を保つ

ECで売れるコツ

  • 写真の質:プロ並みでなくても、明るく清潔感のある写真
  • レビュー獲得:初回購入者に「感想をお願いします」と声かけ
  • リピート施策:メルマガ、LINE、次回クーポンでつなぎ止める

卸で信頼を得るコツ

  • 納期厳守:約束した日時に必ず納品
  • 品質の均一性:ばらつきを最小限に
  • コミュニケーション:売れ行きを聞き、改善提案をする

マルシェで印象を残すコツ

  • 試食・試飲:味を知ってもらうのが最強
  • ストーリーを語る:「この野菜は◯◯さんの畑で」など、背景を伝える
  • 次につなげる:SNSフォロー、次回出店日の案内

よくある失敗パターンと対策

失敗①:すべての販路に手を出して疲弊

対策:まずは1〜2販路に絞り、仕組みを作ってから拡大

失敗②:粗利率だけで販路を選ぶ

対策:労力・時間・安定性も含めて総合判断

失敗③:在庫を持ちすぎて廃棄が増える

対策:受注生産、または少量多頻度生産で調整

失敗④:顧客データを取らずに売りっぱなし

対策:どの販路でも、リピートにつながる導線を作る(LINE登録、次回案内など)


販路開拓のチェックリスト

新しい販路を始める前に、以下を確認しましょう。

  •  手数料・経費を含めた粗利益を計算したか
  •  生産能力・納品頻度に無理がないか
  •  賞味期限・配送方法は対応可能か
  •  顧客層と自社商品の相性は良いか
  •  リピート・ファン化の導線を設計したか
  •  撤退基準を決めたか(◯ヶ月やって売上◯万円以下なら見直し)

さいごに

販路開拓は、「選ぶ」ことと「組み合わせる」ことの両方が大切です。すべての販路に全力投球するのではなく、自社の商品・体制・目標に合った販路を見極め、段階的に広げていく。

まずは1つの販路で小さく成功体験を作り、そこで得た学びを次の販路に活かす。この積み重ねが、持続可能な売上を生み出します。

売れる場所を増やすのではなく、売れる仕組みを作る。
その視点で、あなたの販路戦略を一歩ずつ前に進めていきましょう。

 

リロカリコクリの挑戦 ~「田舎で創り田舎で過ごそう」を事業にする、共創型6次化モデル~

はじめに

「リロカリコクリ株式会社」は宮城県加美郡加美町に位置する企業です。空き家の維持・管理、サテライトオフィスの運営、地場産品の商品開発、そして農業を主軸にした地域貢献・振興まで、地域課題の解決に関わる事業を総合的に展開しています。今回はリロカリコクリ株式会社 代表取締役 米津岳さんにお話を伺いました。

【リロカリコクリとは】

Life Re-localization in Regional co-creationを略してリロカリコクリ。

地域共創における生活の地域回帰という意味の造語です。
「田舎で創り田舎で過ごそう」という思いが込められています。

支援事業参加の背景と、伴走支援で描いた拡張戦略

Q.支援事業に参加したきっかけは何ですか?

当時の委託担当の方から声をかけてもらったのがきっかけです。事業の継続・拡大の道筋に悩んでおり、専門家に伴走してもらいながら「今後どう事業を拡大していくか」を計画したかったタイミングでした。過疎地域に必要なのは「雇用」と「人材育成」。それを実現するには事業拡大が不可欠という前提で、一緒に拡張計画づくりを進めました。

Q.実際に参加してみてどうでしたか?

中小企業診断士の方と事業の実態や課題を具体的に議論できたのが大きかったです。厳しい指摘にイラっとする場面もありましたが、会社運営に真剣に向き合うきっかけになりました。理想と現実を見極めつつ「理想を突き詰めるために、実現計画を数字と行動に落とす」姿勢が定着しました。東北農都総研さん等とのつながりも生まれ、ビジネスマッチングなど事業面のサポートが今も続いています。この計画がなかったら売上1,000万円には届かなかったかなと思います。視野と実行力を広げる起点になりました。

事業の軸—“地域に必要とされるか”、そして“人を大切にする”

Q.事業を進めるうえで大切にしていることは何ですか?

「その地域にとって必要とされているか」を最重要の軸に置いています。同じくらい「社員を大切にする」ことも重視しています。法人である以上、社会貢献が目的です。その中に、社員を大切にする、地域課題を見つける、雇用を作る、人材育成をする—といったミッションが入ってきます。空き家の利活用、移住定住の支援、地場産品の開発、農業の実践も、すべて地域課題の解決に繋がる流れの中に位置づけています。

事業の柱—“地域と共に創る”3本のコア

Q.事業の柱は何ですか?

3つの柱で展開しています。

  • コクリ農園

CO-CREATION=共に創る

移住先の空き家に“広大な農地”が付いていたことがきっかけで、未経験ながら「とりあえずやってみよう」という精神で農業を始めました。主な作付けはさつまいも・じゃがいも。ほかにも少量多品目で年間約80種類の野菜を栽培しています(栽培期間中は農薬不使用)。思い通りに育たないもどかしさもありますが、自分で育てた野菜はやはり格別。畑で収穫したその場でかぶりつく—都会の皆さんにも体験してほしい“人生で一番贅沢”とも思える瞬間を、野菜と体験を通じて届けています。販売は地元直売所・マルシェ・インターネットを中心に行っています。

  • 空き家の維持管理

空き家は「悪者」ではありません。家はその時代、その生活を映す“鏡”のような存在。人が住まなくなると途端に痛みが進むからこそ、適切な維持管理で住み続けられる状態を保つことが重要です。所有者に代わり、空気の入れ替え・点検・簡易清掃などの管理を行い、家の思いを次へ“つむぐ”サポートをします。空き家の放置が景観・衛生・安全・防犯に及ぼす影響を踏まえ、「管理と利活用」へつなげる取り組みです。

  • 小野田SO(サテライトオフィス) Mow-Mow

元牛舎だった建物をリノベーションして誕生した宿泊できるオフィスです。自然豊かな環境の中で仕事に集中できるよう設計し、コワーキングスペースとしての一時利用や、移住体験としての宿泊利用も可能で、「田舎で創り田舎で過ごそう」を体感できる拠点として運営しています。

6次化を目指す方へ—“やめるな”、理想に数字と共創を

Q.6次化に挑戦する事業者・生産者へのアドバイスをお願いします。

一言で言えば「やめるな」です。できない、意味がない、売れない…と言われることもあると思います。それで諦めるくらいなら最初からやらない方がましです。多様な意見に振り回されすぎず、自分の“軸”に必要な要素を付け足しながら前へ進んでください。融資や資金調達を目指すなら「数字」は不可欠です。ただし、それだけでは不十分で「熱意」と「信頼」も同じくらい重要です。達成できると自分が本気で思えるかどうか。そのうえで、地域で6次化を進めるなら「地域と共に創る(共創)」ことが鍵になります。地域の人、行政、支援機関、事業者同士が課題と資源を持ち寄り、一緒に事業を形にする—競い合うより“共に創る”姿勢が持続性を生みます。


地域の課題を事業に変え、暮らしの基盤を強くする——リロカリコクリの実践は、6次化を地域と共に創るプロジェクトへ押し広げています。「田舎で創り田舎で過ごそう」という合言葉のもと、コクリ農園・空き家の維持管理・小野田SO Mow-Mowの三本柱が、人と仕事と住まいをつなぎ直していきます。これから地域資源の活用を考えている方は、是非リロカリコクリの取り組みを参考にしてみてください。次の一歩を踏み出すきっかけになりましたら幸いです。

【インタビュー企業】

リロカリコクリ株式会社

HP:https://re-localicocre.com/

Instagram

リロカリコクリ株式会社        @re_localicocre

小野田サテライトオフィスMow-Mow  @onoda.so.mow_mow

代表取締役 米津岳           @gyonezu

 

後編:自然卵農園の挑戦 ~震災からの再出発、働き方の受け皿、そして「やさしさ」で育てる6次化~

はじめに

「自然卵農園株式会社」は南三陸町に位置し、自社養鶏場にてこだわりの自然卵「卵皇(らおう)」を生産。また、「卵皇(らおう)」を核に、クレープやプリンなどの菓子を製造・販売している企業です。2004年のキッチンカーからスタートし、現在は青葉区五橋の「自然卵のクレープ 五橋店」と、南三陸町ハマーレ歌津商店街の工場兼店舗を運営。店舗運営に加え、卸売やフランチャイズ展開にも取り組んでいます。後編では、震災を乗り越え、自然養鶏と菓子づくりを融合させて歩んできた代表取締役 大沼あかねさんに、事業の起点などについて伺いました。

事業の始まりと震災—自然養鶏への転機

Q.事業を始めたきっかけは?

嫁ぎ先の商店街で夜市があり、そこでクレープを出したのが始まりです。当時(約30年前)は仙台以外でクレープが珍しく、2004年にキッチンカーを始めると子どもたちの行列ができました。

Q.震災後の歩みは?

2011年の東日本大震災で自宅やキッチンカー、全てを失いました。悩んだ末、自然養鶏に挑戦を決め、家族で北海道・江別市に移住して研修を受けました。研修2年目には小さなクレープ店も開店し、札幌近郊で受け入れられるか販売実習。2012年末に夫が先に帰郷し鶏舎準備、2013年4月に家族で帰省し就農しました。同年10月、南三陸町の復興商店街に空きが出て内装を自前で整え、11月に開店しました。

フランチャイズ展開—多様な働き方の受け皿に

Q.フランチャイズ化のきっかけは何ですか?

北海道の時のお店が最初のフランチャイジーです。働いていた女性が名乗りを上げ、フランチャイジーになってくださいました。その後も、「私もキッチンカーをやりたい」と主婦の方々からも声があり、徐々にフランチャイズ展開をしていきました。半数は主婦で、シングルマザーも多く、短時間で自分の時間を確保したいというニーズに合致しました。保証はありませんが、柔軟な働き方の選択肢になっています。

大切にしていること

Q.事業を進める中で、一番大切にしていることは?

「やさしさ」です。従業員は女性が多く(養鶏場は男性ですが)、細かな気遣いが良いサービスにつながると信じています。お客様にも、働く人にも、やさしい現場をつくることが事業の土台です。

6次化を目指す方へ

Q.生産者への応援メッセージをお願いします。

6次化は「小さく始められる」のが魅力です。商売になる・ならないに関係なく、まず一度作ってみる。今はレンタルキッチンもあり、試しやすい環境です。作って、どこかに持っていく。原料の良さを一番わかっているのは、生産者自身。あなたが作った商品が、いちばんおいしいはずです。

さいごに

震災を越えて生まれた自然卵「卵皇」と、素材を活かす職人技。そこに循環型の飼育と、現場を支える「やさしさ」が重なって、自然卵農園の6次化は強くやさしく前に進んできました。生産者だからこそ見える原料の良さを信じて、一歩を踏み出すきっかけとなりましたら幸いです。

 


[インタビュー企業]

自然卵農園株式会社

「自然卵農園菓子工房」 Instagram @sizentamago_kasikoubou

南三陸町ハマーレ歌津商店街内

https://hamare-utatsu.com/welcome/welcome.cgi?item=231128152020

 

「自然卵のクレープ 五橋店」 Instagram @ofm_szts

宮城県仙台市青葉区五橋2丁目11−18  第三ショーケービル壱号館1F

五橋駅(南出口1)より徒歩3分

前編:自然卵農園の挑戦 ~自然卵「卵皇」と職人技でつくる6次化モデル~

はじめに

「自然卵農園株式会社」は南三陸町に位置し、自社養鶏場にてこだわりの自然卵「卵皇(らおう)」を生産。また、「卵皇(らおう)」を核に、クレープやプリンなどの菓子を製造・販売している企業です。2004年のキッチンカーからスタートし、現在は青葉区五橋の「自然卵のクレープ 五橋店」と、南三陸町ハマーレ歌津商店街の工場兼店舗を運営。店舗運営に加え、卸売やフランチャイズ展開にも取り組んでいます。震災を乗り越え、自然養鶏と菓子づくりを融合させて歩んできた代表取締役 大沼あかねさんに、6次化の実践と商品づくりについてお話を伺いました。

支援事業参加の背景

Q.支援事業へ参加したきっかけは何ですか?

養鶏の拡大を目指していましたが、何から手をつければよいか分からず、専門家に伴走してもらいたいと思い参加しました。

Q.実際に参加してみてどうでしたか?

入口は「経営の見える化」でした。数字を見る習慣が根づき、経費の使い方など、意思決定の精度が上がりました。感覚だけに頼らず、事業の状態を数字で把握する重要性を実感しました。

自然卵「卵皇」へのこだわり

Q.「卵皇」へのこだわりは?

菓子づくりが原点なので「臭みを出さない卵」を目指しています。たっぷり運動させて卵白の弾力を引き出すこと、自由に歩ける飼育(平飼い)で健やかに育てること、餌にこだわることを大切にしています。一般に卵黄を濃厚にするため魚粉を使う場合がありますが、臭みの原因になり得るので、緑餌(生の草や野菜、葉物などの植物性飼料)を取り入れています。地域の農家さんから廃棄予定の野菜を譲っていただくなど、循環型の取り組みも重視しています。

菓子づくりの哲学—素材と職人技

Q.お菓子づくりで大切にしていることは何ですか?

「素材を活かすため、余計なものは入れない」ということです。一般に臭み消し目的で使うバニラエッセンスや、膨張剤(ベーキングパウダー)は使用しません。うちには強いメレンゲが立つ卵白があるので、シフォンケーキも膨張剤なしで焼き上げます。卵の強さは、鶏の運動量と餌がポイントです。

Q.技術面でのこだわりは?

一番大切にしているのは「職人技」。すべて手づくりで、湿度や生地の状態を肌感覚で調整します。例えばエンゼルフードケーキ(シフォンケーキの元祖)だと、工場に3人スタッフがいても、うちのクオリティで焼けるのは1人だけというような難しさがあるほど繊細です。卵も日により弾力が違うため、メレンゲの立て方も一定ではありません。経験に基づく微調整が品質を支えています。

Q.商品コンセプトは?

町の中の「ダサかわ」を狙っています。ちょっとダサいけどかわいい。素朴で、日持ちはしないけれど食べやすくおいしい。だからこそリピートしたくなる。派手さより“ずっと売れ続ける菓子屋”のイメージを大切にしています。


次回の後編では、事業の始まりと震災を経て自然養鶏へ転機を迎えた歩み、フランチャイズ展開、多様な働き方への貢献、そして6次化を目指す方へのメッセージをお届けします。

[インタビュー企業]

自然卵農園株式会社

「自然卵農園菓子工房」 Instagram @sizentamago_kasikoubou

南三陸町ハマーレ歌津商店街内

https://hamare-utatsu.com/welcome/welcome.cgi?item=231128152020

 

「自然卵のクレープ 五橋店」 Instagram @ofm_szts

宮城県仙台市青葉区五橋2丁目11−18  第三ショーケービル壱号館1F

五橋駅(南出口1)より徒歩3分

後編:やまうち農園の挑戦 ~6次産業化で広がる可能性~

はじめに

「やまうち農園株式会社」は、宮城県山元町にあるいちじくを中心に果樹を栽培する農園です。特に「完熟いちじく」へのこだわりを持ち、多品種のいちじくを栽培しています。やまうち農園の株式会社 専務取締役 山内裕貴さんと常務取締役 山内理恵さんに、6次産業化への挑戦や完熟いちじくへの思いについてお話を伺いました。

後編では、6次産業化への挑戦と商品開発の裏側、そしてこれから6次産業化を目指す生産者へのメッセージをお届けします。

6次産業化への挑戦

Q.6次産業化に挑戦しようとしたきっかけは何ですか?

完熟いちじくは非常においしいのですが、熟しすぎたり割れてしまったりしたものは流通に乗せられません。でも、それらは決して悪いものではなく、むしろ一番おいしい状態です。これを何かに活用できないかと考えたのがきっかけです。

最初は補助金を活用しながら、いちじくのセミドライやグラッセを作りました。次にお菓子作りに挑戦しようとしたとき、素人が作ったものを売るわけにはいかないと考えました。そこで、国際ホテルのパティシエの方に教えていただき、コラボ商品を作ることができました。これが定番商品となり、6次産業化の大きな一歩となりました。

また、宮城県の郷土食として「いちじくの甘露煮」があります。こちらは、昔からの家庭の味ですが、年々家庭で作る方が減りました。そこで、バイヤーの方に相談しながら「いちじくの甘露煮」を作りました。宮城県の食文化を大切にしたいという思いから出来上がりました。

Q.商品開発で苦労した点は何ですか?

やはり、素人だけで商品を作るのは難しいということです。例えば、いちじくのグミを作る際も、ゼライスさんや県の方々、地元の高校生たちの協力があったからこそ実現しました。グミは特に技術が必要で、解けない、固まる、賞味期限が長いといった条件を満たすのは簡単ではありません。プロの技術を借りることで、安心して提供できる商品が完成しました。

また、商品開発を進める中で「できること」と「できないこと」を見極めることが重要だと感じました。自分たちだけで無理をせず、技術を持った方々に頼ることで、品質の高い商品を作ることができます。

6次産業化を目指す生産者の方へ

Q.6次産業化に取り組む生産者へのメッセージをお願いします。

6次産業化を目指すなら、まずは行政や県の支援を頼ることをお勧めします。自分たちだけで完結しようとせず、技術を持った方々に教えてもらうことが大切です。私たちも、国際ホテルのパティシエやゼライスさんなど、プロの方々に教えていただいたおかげで、しっかりした商品を作ることができました。

また、宮城県には「農産漁村なりわい課」など、6次産業化をサポートしてくれる機関があります。やりたいことがあるなら、まずは相談してみてください。一人で悩む必要はありません。技術を持った方々や行政のサポートを受けることで、きっと道が開けるはずです。


 

完熟いちじくへのこだわりや、プロの技術を取り入れた商品開発は、地域資源を活用した新たな価値創造の好例です。

これから6次産業化に挑戦しようと考えている方は、ぜひやまうち農園の取り組みを参考にしてみてください。地域の魅力を最大限に活かし、次世代に誇れる商品を一緒に作り上げていきましょう。

【インタビュー企業関連HP】

HP: https://yamauchinouen.weebly.com/

Instagram:@yamauchinoen (出店情報など掲載されています!)

前編:やまうち農園の挑戦 ~完熟いちじくへのこだわり~

はじめに

「やまうち農園株式会社」は、宮城県山元町にあるいちじくを中心に果樹を栽培する農園です。特に「完熟いちじく」へのこだわりを持ち、多品種のいちじくを栽培しています。今回は、やまうち農園株式会社 専務取締役 山内裕貴さんと常務取締役 山内理恵さんに、6次産業化への挑戦や完熟いちじくへの思いについてお話を伺いました。

信念

Q.支援事業へ参加したきっかけは何ですか?

県の方からお声がけいただいたことがきっかけです。事業を広げるためのヒントを得られると思い、応募しました。

Q.事業を進める上で大切にしていることは何ですか?

一番大切にしているのは「信頼関係」です。農業や食の世界では、信頼がなければ成り立ちません。お互いに尊敬し合える関係を築くことが重要です。例えば、品質をしっかり守り続けたことで、決まった納期で定期的に送るのではなく、「いいものが出来た時はいつでも送っていいよ」と言ってもらえました。こういった信頼を得られるのは本当に助かります。逆に、信頼を損なうようなことが少しでもあれば、すぐに関係が切れてしまう厳しい世界です。

こだわり

Q.いちじくの多品種栽培をしている理由は何ですか?

実は、いちじくの多品種栽培は父の趣味がきっかけです。でも、いちじくをもっと多くの人に知ってもらいたいという思いから、今では加工用・生食用併せて18品種を栽培しています。10年以上前は、東北地域でいちじくを食べる人はほとんどいなかったです。だからこそ、「いちじくって美味しいんだ」「こんなにいろいろな品種があるんだ」と知ってもらいたいです。いちじくの普及を目指しています。

 

Q.完熟いちじくへのこだわりについて教えてください

いちじくは育てるのは簡単だと思われがちですが、収穫して出荷するのがとても大変です。美味しく完熟したいちじくを収穫することにも、技術と経験が必要になります。そして、完熟したいちじくは柔らかく、虫が入っていないか、傷や割れがないか細かくチェックする必要があります。これを徹底しないと、本当においしいいちじくを届けることはできません。

Q.なぜ完熟にこだわるのですか?

本当においしいと思うものでなければ、いちじくは食卓に浸透しません。おいしいと思わないものは、次は買ってもらえないです。いちじくを「珍しい果物」ではなく、「普通の果物」として食卓に並ぶ存在にしたい。そのためには、完熟の状態で収穫し、本来の甘さやおいしさを届けることが大切だと考えています。


今回は、事業やいちじくに対する思いをお伺いしました。

後編では、やまうち農園が6次産業化に挑戦した背景や、商品開発の裏側について詳しくお話を伺います。6次産業化を目指す生産者の方々にとって、参考になるヒントが満載です。お楽しみに!

【インタビュー企業関連HP】

HP: https://yamauchinouen.weebly.com/

Instagram:@yamauchinoen (出店情報など掲載されています!)

原価と利益の見える化入門:材料費・人件費・設備費の把握と、価格設定の考え方

スプレッドシートで誰でも始められる管理術

はじめに

6次産業化で「作って売る」を始めると、商品の味や見た目と同じくらい大切なのが“数字の見える化”です。難しい会計知識は必要ありません。まずは材料費・人件費・設備費に、販路ごとの手数料や送料を足し合わせて、価格と粗利益の関係を掴むところから始めましょう。

ここでは、現場ですぐ使える考え方と、スプレッドシート(Excel・Googleスプレッドシート)での運用方法をわかりやすくお伝えします。

原価の基本構造をつかむ

原価は大きく「つくるための費用」「売るための費用」に分かれます。まずは”つくる”に集中し、1個あたりの単位原価を算出しましょう。

つくるための費用(製造原価)

  • 材料費(原料+包材)
    食材、調味料、容器、ラベル、緩衝材など、商品そのものに使うすべての材料を含みます。
  • 直接人件費
    仕込み、加工、包装などにかかった時間 × 時給で計算します。自分自身の作業時間も必ず含めることがポイントです。
  • 設備費・共通費(オーバーヘッド)の按分
    オーブン・冷蔵庫などの減価償却費、光熱水費、家賃、消耗品など、商品1個あたりにどう振り分けるかを決めます。

売るための費用(チャネル費)

販路ごとに発生する費用のことです。

  • 決済手数料(クレジットカード・電子マネー等)
  • 送料(EC販売、ギフト配送など)
  • 出店料(マルシェ、催事)
  • 直売所の歩合(売上の◯%など)
  • 卸値の差額(小売価格の何割で卸すか)

これらを単位原価とは別に整理すると、販路別の採算が見えてきます。

単位原価と粗利益をシンプルに計算する

考え方はとてもシンプルです。

【単位原価(製造)】
= 材料費 + 包材費 + 直接人件費 + 設備・共通費の按分

【販路別の1個あたり粗利益】
= 販売価格 − 単位原価 − チャネル費

この2行が見えれば、価格の根拠ができます。「どの販路で何個売ると、いくら粗利益が出るか」を逆算できるようになり、経営判断がしやすくなります。

費用ごとの押さえどころ

材料費は”歩留まり”と”包材”で狂いやすい

  • 仕入単価の一覧化:更新日も記録しましょう。価格変動を見逃さないためです。
  • 歩留まりを見込む:皮むき、芯取り、加熱で重量が減る場合、出来上がり量に対して必要な原料量を正確に計算します。
  • 包材の積み漏れに注意:容器、袋、ラベル、保冷剤、緩衝材など、細かい部品も1点ずつ単価を入れると抜け漏れが防げます。

直接人件費は”時間で積み上げる”

  • 仕込み、焼成、冷却、包装…工程ごとに実際にタイマーで計測し、1個あたり何分かを出します。
  • 時給はパートさんだけでなく、ご自身の作業単価も必ず入れるのがコツです。自分の時間をゼロ換算すると、利益が実態より大きく見えてしまい、経営判断を誤る原因になります。

設備・共通費は”簡易ルールで継続”が正解

複雑にしすぎると続きません。以下のような簡易按分で十分です。

  • 設備(オーブン、冷蔵庫など)
    購入額 ÷ 耐用年数 ÷ 年間生産個数 = 1個あたりの目安額
    例:オーブン30万円、耐用5年、年1.5万個 → 30万 ÷ 5 ÷ 1.5万 ≒ 1個4円
  • 光熱水費・消耗品
    月額合計 ÷ 月間生産個数で簡易按分
  • 家賃
    製造に使っている面積や時間の割合でざっくり配分

精緻さより、毎月同じルールで継続することが大切です。

チャネル費は”販路ごとに分けて管理”

  • 直売所:歩合、決済手数料
  • マルシェ・催事:出店料、交通費
  • EC:送料、決済手数料、梱包資材
  • 卸:卸値(小売価格の何割で卸すか)

販路ごとに費用の性質が違うため、単位原価とは別に販路別の可変費として整理すると、販路ミックス設計(どの販路で何割売るか)がしやすくなります。

価格設定は3つの視点で組み立てる

① コスト積み上げ+目標粗利率

単位原価が300円、目標粗利率50%なら
→ 300 ÷(1 − 0.5)= 600円が目安

まずは「赤字にならない価格」を出しましょう。

② ベンチマーク(市場比較)

近隣や同カテゴリの価格帯を把握し、品質や量とのバランスで自店のレンジを決めます。道の駅、直売所、ECモールなどで類似商品をリサーチしましょう。

③ 価値・体験の上乗せ

  • 原料の希少性(地域限定、有機栽培など)
  • 手間・ストーリー(手作業、伝統製法、生産者の顔が見える)
  • 試食、体験同梱、パッケージデザイン

これらで“納得の値ごろ感”を作ります。

この3つを突き合わせて、最終価格を決めます。

値上げが必要なときは、量や仕様の見直し(例:ミニサイズ化、パッケージ簡素化)と合わせて検討すると、お客様に受け入れられやすくなります。

スプレッドシートで始める”3枚構成”

複雑なシステムは不要です。Excel・Googleスプレッドシートで以下の3シートを作りましょう。

シート① 仕入れ単価一覧

原料名 規格・単位 単価(税込) 更新日 備考
米粉 1kg 680円 2026/1/5 A社仕入
10個 320円 2026/1/5 地元養鶏場

※税抜・税込はどちらかに統一してください。

シート② レシピ原価表(商品ごと)

項目 使用量 単価 小計
米粉 80g 0.68円/g 54.4円
1.5個 32円/個 48円
包材(箱) 1個 30円 30円
作業時間 15分 1,200円/時 300円
設備・光熱按分 20円
単位原価 452.4円

※自動集計できるよう、SUM関数を活用しましょう。

シート③ 販路別の価格・粗利

販路 販売価格 チャネル費 単位原価 粗利益 粗利率 備考
直売 800円 40円(決済手数料5%) 452円 308円 38.5%
560円 0円 452円 108円 19.3% 小売価格の70%
EC 800円 150円(送料+手数料) 452円 198円 24.8% 単品発送

関数は合計と掛け算・割り算が中心で十分回ります。

今日からできる5ステップ

  1. 主要商品のレシピと包材を洗い出し、重さ(g)に統一する
  2. 仕入れ単価を確認し、一覧を作成(更新日は必ず記録)
  3. 工程ごとの時間をタイマーで計測し、1個あたり分数に直す
  4. 設備・光熱の按分ルールを決め、単位原価を出す
  5. 販路ごとの手数料・送料を整理し、粗利益を比較する

まずは上位3商品から始めましょう。小さく始めて、続けることが成功の鍵です。

ミニケースでイメージをつかむ(数値は説明用の例)

商品:米粉シフォン 1個

  • 原料費:120円(米粉、卵、砂糖、油、塩)
  • 包材費:30円(箱、ラベル)
  • 直接人件費:300円(1個15分 × 1,200円/時)
  • 設備・光熱の按分:20円

→ 単位原価:470円

販路別の比較

  • 直売(価格800円、決済手数料5%=40円)
    粗利益 = 800 − 470 − 40 = 290円(粗利率36%)
  • 卸(卸値560円、チャネル費なし)
    粗利益 = 560 − 470 = 90円(粗利率16%)

この差を踏まえて、「直売:卸 = 7:3」など販路ミックスを設計します。

よくある落とし穴(先回りで防ぐ)

  1. 包材の積み残し(ラベルや保冷剤などの”細かいもの”を忘れがち)
  2. 歩留まりの未反映(下処理で減る分を見込まず材料費が過小に)
  3. 自分の時給ゼロ計上(実際の利益が見えなくなる)
  4. チャネル費の過少計上(送料・決済・出店料の合算漏れ)
  5. 生産個数の見積もり固定(設備按分は年に一度見直す)

さいごに

原価と利益の見える化は、難解な会計ではありません。材料費・人件費・設備費を1個あたりにまとめ、販路ごとの費用を差し引いて粗利益を見る——このシンプルな流れを月に一度回すだけで、価格の根拠ができ、改善の打ち手が見えてきます。

まずは上位3商品から。小さく始めて、続ける。数字は”理想に現実を近づける道具”です。

数字を味方に、あなたの6次産業化を一段と強くしていきましょう。

インナーブランディングの進め方と具体的な方法-後半-

はじめに

前回は、インナーブランディングの重要性と基礎知識について解説しました。今回は、地域の農業や漁業、林業の現場でインナーブランディングを進めるための具体的なステップと方法を紹介します。

インナーブランディングの進め方

現状認識

まずは、地域の事業や組織内で、理念やビジョンがどの程度浸透しているかを把握することが重要です。

  • アンケート調査:従業員や関係者に、事業の目的や価値観についてどの程度理解しているかを尋ねる。
  • 個別インタビュー:地域の生産者や従業員に直接話を聞き、課題や意見を収集する。
  • 地域の声を聞く:地域住民や関係者が事業に対してどのようなイメージを持っているかを確認する。

 

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確にする

インナーブランディングの基盤となるのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。これらを明確に定義し、組織内で共有することで、事業の方向性を示します。

  • ミッション(Mission):地域資源を活用し、持続可能な産業を育てるという使命。
  • ビジョン(Vision):地域の未来を支える産業として、次世代に誇れる事業を目指す。
  • バリュー(Value):自然環境を守り、地域文化を尊重しながら事業を進めるという価値観。

 

これらは、具体的でわかりやすい言葉で表現することが重要です。例えば、「地域の海を守りながら、世界に誇れる水産業を育てる」といった形で、従業員が日々の業務で実感できる内容にします。

計画を立てる

MVVを明確にしたら、それを浸透させるための計画を立てます。計画を立てる際のポイントは以下の通りです。

  • 長期的な視点を持つ:インナーブランディングは短期間で成果が出るものではありません。例えば、3年計画で地域のブランド価値を浸透させる目標を設定します。
  • 経営層の理解を得る:地域のリーダーや経営者が積極的に関与することで、活動がスムーズに進みます。

 

社内浸透させる

計画に基づき、具体的な施策を実行します。現場で活用できる方法を以下に示します。

  • 地域イベントの開催:地域住民や従業員が参加できるイベントを通じて、事業の理念やビジョンを共有する。
  • トップメッセージ:地域のリーダーや経営者が直接理念やビジョンを語り、従業員や関係者に想いを伝える。
  • クレドの作成:地域の特性を反映した行動指針を簡潔にまとめ、従業員が日々の業務で活用できるようにする。
  • 社内報やSNSの活用:地域の事業活動や理念をわかりやすく発信し、従業員や関係者に共有する。

 

最後に

現場でインナーブランディングを進めることは、事業の持続可能性を高めるだけでなく、地域全体の活性化にもつながります。従業員や関係者が事業に誇りを持ち、地域の魅力を発信することで、地域ブランドの価値が広がります。

ぜひ、今回ご紹介したポイントや方法を参考に、インナーブランディングに取り組んでみてください。地域の未来を支える産業として、次世代に誇れる事業を目指しましょう。

インナーブランディングの重要性と基礎知識-前半-

はじめに

近年、企業のブランド価値を高めるためにブランディングに注力する動きが広がっています。農業や漁業、林業など地域に根ざした産業においても、ブランド価値を高めることは、地域資源を活用した事業の発展や後継者の確保、地域の活性化につながります。

ブランディングには、社外に向けた「アウターブランディング」と、社内に向けた「インナーブランディング」の2つがあります。今回は、企業や組織の内側からブランド価値を高める「インナーブランディング」に焦点を当て、その重要性と基礎知識を解説します

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、企業や組織が社員やメンバーに対して行うブランディング活動を指します。農業や漁業、林業などの現場では、従業員や地域の関係者が「自分たちの仕事や地域に誇りを持つ」ことが、事業の継続や発展において非常に重要です。

具体的には、以下のような活動を通じて、組織内のメンバーが共感や愛着を持つよう促します

  • 理念やビジョンの共有:地域資源を活用した事業の目的や未来像を明確にし、メンバーに伝える。
  • 価値観の浸透:地域の自然や文化を守りながら事業を進めるという価値観を共有する。

 

これにより、以下のような効果が期待できます。

  • 離職率の低下:メンバーが仕事に誇りを持ち、地域に根付いて働き続ける。
  • 地域ブランドの向上:メンバーが地域の魅力を発信し、外部からの評価が高まる。
  • 後継者の確保:若い世代が地域の仕事に魅力を感じ、次世代の担い手として育つ。

アウターブランディングとの違い

インナーブランディングが社内や組織内のメンバーに向けた活動であるのに対し、アウターブランディングは顧客や取引先、地域住民、観光客など社外に向けたブランディング活動を指します。

例えば、地域の特産品をブランド化し、全国や海外に向けて発信することはアウターブランディングの一例です。一方で、地域の生産者や従業員がその特産品に誇りを持ち、積極的にその魅力を伝えることはインナーブランディングの成果と言えます。

インナーブランディングとアウターブランディングは相互に補完し合う関係にあります。社内外で一貫したブランド価値を浸透させることで、地域産業の信頼性が高まり、持続可能な事業運営につながります。

 

次回の後半では、インナーブランディングを実際に進めるための具体的なステップや方法について解説します。地域の農業や漁業、林業の現場でどのように活用できるか、具体的な事例を交えながらご紹介します。

 

 

【第4弾】仙台イーストカントリーに学ぶ、6次産業化はじめの一歩

【インタビュー企業】

会社名 農事組合法人仙台イーストカントリー
所在地 宮城県仙台市若林区荒井字神屋敷224
設立 平成20年1月15日
代表者名 佐々木 均
構成員 役員12名、理事10名、パート15名(2018年12月現在)
HP https://www.sendaieast.jp/

はじめに

仙台イーストカントリーは令和5年みやぎ6次産業化リノベーション支援事業に参加した企業の1つです。震災により津波被害を受けた農地を引き受け、仙台平野の水田を復興させ、安心安全なお米や農産物を育て上げています。また、育てたお米を使った農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」を運営や、神屋敷地域で培われてきた味噌づくりを体験できる「みそづくりワークショップ」を開催など、6次産業化を目指す企業の手本となる企業です。これまで、【第1弾】【第2弾】【第3弾】と連載してきました、仙台イーストカントリー 理事 佐々木こづ恵氏へのインタビューも今回が最終回となります。今回は、6次産業化を進める中で佐々木こづ恵氏が大切にしている考え、心得についてお伺いして参りました。

生産と加工

Qコメの多品種栽培をしている理由は?

仙台イーストカントリーではコメの多品種栽培を行っております。もちろんお客様のご要望に応えたいという思いや、商品バラエティーを増やしたいという思いもありますが、大きな理由は、刈り取り適期を少しずつずらして1台の機械で済むようにしているためです。一度に田植えをすると、1週間で全て刈り取らないといけなくなったり、適期をずらさないといけなくなったりしてしまいます。また、機械も人もたくさん必要になります。そういったことが無いように、様々工夫をしています。そもそもの品種を増やしていることもそうですが、種まきも湛水直播・乾田直播・鉄コーティング直播と3種類の方法で行い、稲の出来上がり時期もずらしています。コメの品質は保ちつつ、1台のコンバインを極力長い時期稼働させるようにしています。機械1台増やすと、人も倍必要になりますしね。

コロナ前は新米試食会を実施し、お客様のニーズを聞いていました。好みは千差万別ですので、新米試食会で一口ずつ食べて好きな品種を選んで買って帰れるようにしていました。また、人気のあった品種は作付けも増やしていました。コロナで開催は難しくなってしまいましたが、こういったイベントは喜んでもらえましたね。色々な品種がすぐ買えるので、色々冒険して、うちにはこれがあっているなとか見つけてもらう楽しみは今でも提供出来ているかと思います。

Q事業を進めていく中で大切にしていることは?

コストを下げるためにも、お客様に喜んでもらうためにも、「ちょっとめんどくさいな」を増やしていくことを大切にしています。

コメの多品種栽培も苗を間違えないように管理をしたり、コンバインや乾燥機も品種ごとに混じらないように掃除をしたり、ちょっとめんどくさいの積み重ねが大きなコストダウンに繋がると考えています。

たくさん機械を導入したり、大人数で作って売ったりとか、お金と人をたくさん投入すればもちろん売り上げは上がるかと思います。そうではなく、限られた機械・限られた人数で売上をあげていくには「ちょっとめんどくさいな」が重要になります。

稲わらの販売もしていますが、とにかく資源を無駄にすることなく、設備投資するほどのお金はないので、今ある設備を最大限活用し、事業の柱を大きくしていく必要があります。うちは、コメ・味噌・加工品の3本柱でやっていますが、陰で支える柱は何本あってもいいですからね。今あるものを使って、「ちょっとめんどくさいな」を積み重ねていくことが大切です。

[画像:仙台イーストカントリー販売商品]

さいごに

6次産業化に取り組む企業や生産者へ応援メッセージをお願いいたします

今は、私たちと一緒に6次化に取り組みだした人たちがどんどん辞めてしまっています。高齢化が進んできました。漬物屋さんも保健所が厳しくなってたくさん辞めていっています。だからこそ、どんどん新しい方たちに参入してきて欲しいです。一緒に盛り上げていけたら嬉しいです。

 

全4回に渡り、仙台イーストカントリー理事佐々木こづ恵氏にインタビューをして参りました。仙台イーストカントリーの取り組みは地域の農業を支えるだけではなく、新たな価値を生み出し、雇用創造や人口減少の中での農業への取り組みなど未来の可能性を広げる力強い一歩となっています。6次産業化を目指す皆さまにとって、新たな一歩を踏み出すきっかけになりましたら幸いです。

 

 

【インタビュー企業関連HP】
仙台イーストカントリー:https://www.sendaieast.jp/ 
おにぎり茶屋ちかちゃん:https://www.pref.miyagi.jp/site/sdgt/noa5-chikchan.html

 

※令和6年度取材・投稿記事