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宮城県地域資源活用・地域連携サポートセンター > 最新情報 >

インナーブランディングの進め方と具体的な方法-後半-

はじめに

前回は、インナーブランディングの重要性と基礎知識について解説しました。今回は、地域の農業や漁業、林業の現場でインナーブランディングを進めるための具体的なステップと方法を紹介します。

インナーブランディングの進め方

現状認識

まずは、地域の事業や組織内で、理念やビジョンがどの程度浸透しているかを把握することが重要です。

  • アンケート調査:従業員や関係者に、事業の目的や価値観についてどの程度理解しているかを尋ねる。
  • 個別インタビュー:地域の生産者や従業員に直接話を聞き、課題や意見を収集する。
  • 地域の声を聞く:地域住民や関係者が事業に対してどのようなイメージを持っているかを確認する。

 

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確にする

インナーブランディングの基盤となるのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。これらを明確に定義し、組織内で共有することで、事業の方向性を示します。

  • ミッション(Mission):地域資源を活用し、持続可能な産業を育てるという使命。
  • ビジョン(Vision):地域の未来を支える産業として、次世代に誇れる事業を目指す。
  • バリュー(Value):自然環境を守り、地域文化を尊重しながら事業を進めるという価値観。

 

これらは、具体的でわかりやすい言葉で表現することが重要です。例えば、「地域の海を守りながら、世界に誇れる水産業を育てる」といった形で、従業員が日々の業務で実感できる内容にします。

計画を立てる

MVVを明確にしたら、それを浸透させるための計画を立てます。計画を立てる際のポイントは以下の通りです。

  • 長期的な視点を持つ:インナーブランディングは短期間で成果が出るものではありません。例えば、3年計画で地域のブランド価値を浸透させる目標を設定します。
  • 経営層の理解を得る:地域のリーダーや経営者が積極的に関与することで、活動がスムーズに進みます。

 

社内浸透させる

計画に基づき、具体的な施策を実行します。現場で活用できる方法を以下に示します。

  • 地域イベントの開催:地域住民や従業員が参加できるイベントを通じて、事業の理念やビジョンを共有する。
  • トップメッセージ:地域のリーダーや経営者が直接理念やビジョンを語り、従業員や関係者に想いを伝える。
  • クレドの作成:地域の特性を反映した行動指針を簡潔にまとめ、従業員が日々の業務で活用できるようにする。
  • 社内報やSNSの活用:地域の事業活動や理念をわかりやすく発信し、従業員や関係者に共有する。

 

最後に

現場でインナーブランディングを進めることは、事業の持続可能性を高めるだけでなく、地域全体の活性化にもつながります。従業員や関係者が事業に誇りを持ち、地域の魅力を発信することで、地域ブランドの価値が広がります。

ぜひ、今回ご紹介したポイントや方法を参考に、インナーブランディングに取り組んでみてください。地域の未来を支える産業として、次世代に誇れる事業を目指しましょう。

インナーブランディングの重要性と基礎知識-前半-

はじめに

近年、企業のブランド価値を高めるためにブランディングに注力する動きが広がっています。農業や漁業、林業など地域に根ざした産業においても、ブランド価値を高めることは、地域資源を活用した事業の発展や後継者の確保、地域の活性化につながります。

ブランディングには、社外に向けた「アウターブランディング」と、社内に向けた「インナーブランディング」の2つがあります。今回は、企業や組織の内側からブランド価値を高める「インナーブランディング」に焦点を当て、その重要性と基礎知識を解説します

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、企業や組織が社員やメンバーに対して行うブランディング活動を指します。農業や漁業、林業などの現場では、従業員や地域の関係者が「自分たちの仕事や地域に誇りを持つ」ことが、事業の継続や発展において非常に重要です。

具体的には、以下のような活動を通じて、組織内のメンバーが共感や愛着を持つよう促します

  • 理念やビジョンの共有:地域資源を活用した事業の目的や未来像を明確にし、メンバーに伝える。
  • 価値観の浸透:地域の自然や文化を守りながら事業を進めるという価値観を共有する。

 

これにより、以下のような効果が期待できます。

  • 離職率の低下:メンバーが仕事に誇りを持ち、地域に根付いて働き続ける。
  • 地域ブランドの向上:メンバーが地域の魅力を発信し、外部からの評価が高まる。
  • 後継者の確保:若い世代が地域の仕事に魅力を感じ、次世代の担い手として育つ。

アウターブランディングとの違い

インナーブランディングが社内や組織内のメンバーに向けた活動であるのに対し、アウターブランディングは顧客や取引先、地域住民、観光客など社外に向けたブランディング活動を指します。

例えば、地域の特産品をブランド化し、全国や海外に向けて発信することはアウターブランディングの一例です。一方で、地域の生産者や従業員がその特産品に誇りを持ち、積極的にその魅力を伝えることはインナーブランディングの成果と言えます。

インナーブランディングとアウターブランディングは相互に補完し合う関係にあります。社内外で一貫したブランド価値を浸透させることで、地域産業の信頼性が高まり、持続可能な事業運営につながります。

 

次回の後半では、インナーブランディングを実際に進めるための具体的なステップや方法について解説します。地域の農業や漁業、林業の現場でどのように活用できるか、具体的な事例を交えながらご紹介します。

 

 

【第4弾】仙台イーストカントリーに学ぶ、6次産業化はじめの一歩

【インタビュー企業】

会社名 農事組合法人仙台イーストカントリー
所在地 宮城県仙台市若林区荒井字神屋敷224
設立 平成20年1月15日
代表者名 佐々木 均
構成員 役員12名、理事10名、パート15名(2018年12月現在)
HP https://www.sendaieast.jp/

はじめに

仙台イーストカントリーは令和5年みやぎ6次産業化リノベーション支援事業に参加した企業の1つです。震災により津波被害を受けた農地を引き受け、仙台平野の水田を復興させ、安心安全なお米や農産物を育て上げています。また、育てたお米を使った農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」を運営や、神屋敷地域で培われてきた味噌づくりを体験できる「みそづくりワークショップ」を開催など、6次産業化を目指す企業の手本となる企業です。これまで、【第1弾】【第2弾】【第3弾】と連載してきました、仙台イーストカントリー 理事 佐々木こづ恵氏へのインタビューも今回が最終回となります。今回は、6次産業化を進める中で佐々木こづ恵氏が大切にしている考え、心得についてお伺いして参りました。

生産と加工

Qコメの多品種栽培をしている理由は?

仙台イーストカントリーではコメの多品種栽培を行っております。もちろんお客様のご要望に応えたいという思いや、商品バラエティーを増やしたいという思いもありますが、大きな理由は、刈り取り適期を少しずつずらして1台の機械で済むようにしているためです。一度に田植えをすると、1週間で全て刈り取らないといけなくなったり、適期をずらさないといけなくなったりしてしまいます。また、機械も人もたくさん必要になります。そういったことが無いように、様々工夫をしています。そもそもの品種を増やしていることもそうですが、種まきも湛水直播・乾田直播・鉄コーティング直播と3種類の方法で行い、稲の出来上がり時期もずらしています。コメの品質は保ちつつ、1台のコンバインを極力長い時期稼働させるようにしています。機械1台増やすと、人も倍必要になりますしね。

コロナ前は新米試食会を実施し、お客様のニーズを聞いていました。好みは千差万別ですので、新米試食会で一口ずつ食べて好きな品種を選んで買って帰れるようにしていました。また、人気のあった品種は作付けも増やしていました。コロナで開催は難しくなってしまいましたが、こういったイベントは喜んでもらえましたね。色々な品種がすぐ買えるので、色々冒険して、うちにはこれがあっているなとか見つけてもらう楽しみは今でも提供出来ているかと思います。

Q事業を進めていく中で大切にしていることは?

コストを下げるためにも、お客様に喜んでもらうためにも、「ちょっとめんどくさいな」を増やしていくことを大切にしています。

コメの多品種栽培も苗を間違えないように管理をしたり、コンバインや乾燥機も品種ごとに混じらないように掃除をしたり、ちょっとめんどくさいの積み重ねが大きなコストダウンに繋がると考えています。

たくさん機械を導入したり、大人数で作って売ったりとか、お金と人をたくさん投入すればもちろん売り上げは上がるかと思います。そうではなく、限られた機械・限られた人数で売上をあげていくには「ちょっとめんどくさいな」が重要になります。

稲わらの販売もしていますが、とにかく資源を無駄にすることなく、設備投資するほどのお金はないので、今ある設備を最大限活用し、事業の柱を大きくしていく必要があります。うちは、コメ・味噌・加工品の3本柱でやっていますが、陰で支える柱は何本あってもいいですからね。今あるものを使って、「ちょっとめんどくさいな」を積み重ねていくことが大切です。

[画像:仙台イーストカントリー販売商品]

さいごに

6次産業化に取り組む企業や生産者へ応援メッセージをお願いいたします

今は、私たちと一緒に6次化に取り組みだした人たちがどんどん辞めてしまっています。高齢化が進んできました。漬物屋さんも保健所が厳しくなってたくさん辞めていっています。だからこそ、どんどん新しい方たちに参入してきて欲しいです。一緒に盛り上げていけたら嬉しいです。

 

全4回に渡り、仙台イーストカントリー理事佐々木こづ恵氏にインタビューをして参りました。仙台イーストカントリーの取り組みは地域の農業を支えるだけではなく、新たな価値を生み出し、雇用創造や人口減少の中での農業への取り組みなど未来の可能性を広げる力強い一歩となっています。6次産業化を目指す皆さまにとって、新たな一歩を踏み出すきっかけになりましたら幸いです。

 

 

【インタビュー企業関連HP】
仙台イーストカントリー:https://www.sendaieast.jp/ 
おにぎり茶屋ちかちゃん:https://www.pref.miyagi.jp/site/sdgt/noa5-chikchan.html

 

※令和6年度取材・投稿記事

【第3弾】仙台イーストカントリーに学ぶ、農家レストランのはじまり

【インタビュー企業】

会社名 農事組合法人仙台イーストカントリー
所在地 宮城県仙台市若林区荒井字神屋敷224
設立 平成20年1月15日
代表者名 佐々木 均
構成員 役員12名、理事10名、パート15名(2018年12月現在)
HP https://www.sendaieast.jp/

はじめに

仙台イーストカントリーは令和5年みやぎ6次産業化リノベーション支援事業に参加した企業の1つです。震災により津波被害を受けた農地を引き受け、仙台平野の水田を復興させ、安心安全なお米や農産物を育て上げています。また、育てたお米を使った農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」を運営や、神屋敷地域で培われてきた味噌づくりを体験できる「みそづくりワークショップ」を開催など、6次産業化を目指す企業の手本となる企業です。今回は、【第1弾】【第2弾】に引き続き、佐々木こづ恵氏に、農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」についてお伺いしてきました。レストランやカフェに挑戦してみたいけどハードルが高いと感じている生産者の方も多いかと思います。そういった方々に向けて、おにぎり茶屋ちかちゃん誕生のきっかけから売上向上の秘密までお伝えいたします。

おにぎり茶屋ちかちゃん

Q名前の由来は何ですか?

「ちかちゃん」というのは、私の母親の名前がちかこという名前で、みんなからちかちゃん、ちかちゃんと呼ばれていたからです。また、母方の祖父もちかおという名前でちかちゃんと呼ばれていました。母親は現在(令和6年時)72歳で理事を担当していますが、お店には時々しか現れないレアキャラになっています。

[画像:おにぎり茶屋ちかちゃん]

Qおにぎり茶屋ちかちゃんを始めたきっかけは?

これも東日本大震災がきっかけです。震災で色々なものを無くしました。被害が大きく、避難が必要になり、たまたま避難所ではなく知人の家に避難することになりました。なにもなくなってしまったとき、一番始めに口にしたのがおにぎりだったんです。知人の家でみんなでおにぎりを作って、避難した人たちや消防団にお昼ご飯としておにぎりを差し入れもしました。その時、おにぎりの魅力に気が付きました。おにぎりはやはり、日本人のソウルフードだなと。手軽にどんな時でも、大人も子どもも食べられるおにぎりを自分たちのお米で作りたい。おいしさを共有したいと考えました。

また、震災で畑もだめになり、スタッフの働く場所もなくなってしまいました。そのため、何とか働く場所を確保したいという思いもあり、補助金の後押しもあって、補助金が出る農家レストランをやろうと決めました。

農家レストランというとハードルが高く感じていましたが、元々何件かのスーパーにおにぎりを卸していたこともあり、おにぎり屋さんだったらハードルが低い。テイクアウトとイートインの両方を用意して、レストランとしておにぎりがメインだったら出来ると考え挑戦しました。

現在では、当初ここまでいったらすごいなと掲げていた目標売上の3倍以上売上をあげることが出来ています。

[画像:おにぎり茶屋ちかちゃんで働く方々]

Qどういった商品が人気ですか?

ちかちゃんの中で一番人気なのはおにぎりプレート。

おにぎりを自分流にカスタムできるのが大きな特徴です。

お米の量から、具まで組み合わせ自由です。具も1つとは限らず、色々な具材を合わせて注文可能です。常連さんは辛みそにツナでピリ辛ツナにしてみるなど、2,3種類の食材を組み合わせてバリエーション豊かに注文して下さっています。テイクアウトは出来ているものになりますが、イートインはその場で注文を受けた後に握ります。

こういった工夫がお客様にも喜んでいただけますし、単価UPにも繋がります。このご時世、どうしても値上げをしなければならない場面が多くありますが、ただ値上げするだけではお客様も離れていってしまいます。そこで、ちょっと工夫して、選ぶ喜びなど付加価値をつけることで、お客様の満足度もあげていくことができるかと思います。

とにかく、お客様に楽しんでもらえる、飽きさせない工夫は常々していく必要があると考えています。

[画像:おにぎりプレート]

今回は、「おにぎり茶屋ちかちゃん」についてお伺いしました。

レストランやカフェを検討している方々のお役に立ちましたら幸いです。

次回はついに最終回、6次産業化を進める中での心得についてお伝えいたします。

 

【インタビュー企業関連HP】
仙台イーストカントリー:https://www.sendaieast.jp/ 
おにぎり茶屋ちかちゃん:https://www.pref.miyagi.jp/site/sdgt/noa5-chikchan.html

 

※令和6年度取材・投稿記事

【第2弾】仙台イーストカントリーに学ぶ、大人気ワークショップの秘訣

【インタビュー企業】

会社名 農事組合法人仙台イーストカントリー
所在地 宮城県仙台市若林区荒井字神屋敷224
設立 平成20年1月15日
代表者名 佐々木 均
構成員 役員12名、理事10名、パート15名(2018年12月現在)
HP https://www.sendaieast.jp/

はじめに

仙台イーストカントリーは令和5年みやぎ6次産業化リノベーション支援事業に参加した企業の1つです。震災により津波被害を受けた農地を引き受け、仙台平野の水田を復興させ、安心安全なお米や農産物を育て上げています。また、育てたお米を使った農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」を運営や、神屋敷地域で培われてきた味噌づくりを体験できる「みそづくりワークショップ」を開催など、6次産業化を目指す企業の手本となる企業です。今回は【第1弾】に引き続き、仙台イーストカントリー 理事 佐々木こづ恵氏に、大人気「みそづくりワークショップ」についてお聞きしました。予約がなかなか取れない本イベント、開催きっかけや工夫していることに関してお伝えいたします。

MYみそワークショップ

QMYみそワークショップを始めたきっかけは?

元々、仙台イーストカントリーがある、神屋敷という地域は手作りの味噌が有名な地域です。仙台イーストカントリーが管理している蔵では「神屋敷仕込み味噌クラブ」が仕込んだ味噌樽が貯蔵されています。神屋敷という地域は、東日本大震災による津波で多くの家屋で床上浸水という被害がありました。蔵も床上浸水しましたが、奇跡的に味噌樽は倒れずに無事残り、販売することができました。しかし、売上は激減してしまい、生産を維持できないレベルになりました。このままでは味噌事業が続けられなくなる。手作り味噌が終わってしまう。そう考えて、少しでも味噌のおいしさを、手作りの良さを発信出来たらと思い、ワークショップを始めました。また、お客様に手作り味噌の知識を伝えていくことで、お客様に安心安全に楽しんで食べてもらえるようになったらと考えていました。ワークショップが非常に好評で、味噌の売上は震災前の8割まで戻ってきました。

[画像:手作り味噌作成の様子]

Qどういった方が参加していますか?

参加者の皆さんの年齢層はバラバラです。子連れの方もいらっしゃいますし、夫婦でお越しくださる方もいます。40~50代の主婦の方が多いですが、最近は男性の方も増えてきています。

また、8割はリピーターさんです。結構なリピート率で、第1回開催前に今年分の予約はほぼ埋まってしまいます。

[画像:ワークショップの様子]

Qワークショップではどういったことをしますか?

ゆでた豆と麹を用意しております。そこで、豆をつぶして、麹と合わせて味噌玉を作るといった仕込み作業をしてもらいます。味噌として完成するのでは早くて11月頃。最低でも10カ月ほど熟成させる必要があります。そのため、家に持ち帰って、家のシンク下や押し入れの中などで育ててもらいます。材料は同じですが、育てる環境・発酵の状況が異なりますので、皆さんもMYみそを楽しんでもらうことができます。

当日、スタッフは各テーブルを回りながら、指導しています。リピーターの方も多いので、去年の味噌はどうでしたか?などコミュニケーションを取りながら進めていきます。

また、コロナ前はワークショップ内でお食事タイムもありました。おにぎりと豚汁を食べながら質問形式で座談会というのも行っていました。コロナ後はお土産を持って帰る形式に変更し、みんなでの食事はなくなってしまいましたが、質問会は継続しています。

参加者とのこまめなコミュニケーションがリピートにも繋がっているのかなと思います。

[画像:手作りみそキット]

Q開催時に大切にしていることはなんですか?

味噌が出来上がって食べるのは1年後。食べたときにはじめて美味しいと感じてもらえます。そのため、ワークショップの中ではとにかく来るお客様に楽しんで帰ってほしい。味噌づくりやこのワークショップ自体を楽しんでもらえたらと思っています。

 

今回は大人気、MYみそワークショップについてお伺いしました。

次回は農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」についてお伝えいたします。

 

【インタビュー企業関連HP】 
仙台イーストカントリー:https://www.sendaieast.jp/ 

おにぎり茶屋ちかちゃん:https://www.pref.miyagi.jp/site/sdgt/noa5-chikchan.html

※令和6年度取材・投稿記事

【第1弾】仙台イーストカントリーに学ぶ、支援事業効果

【インタビュー企業】

会社名 農事組合法人仙台イーストカントリー
所在地 宮城県仙台市若林区荒井字神屋敷224
設立 平成20年1月15日
代表者名 佐々木 均
構成員 役員12名、理事10名、パート15名(2018年12月現在)
HP https://www.sendaieast.jp/

はじめに

仙台イーストカントリーは令和5年みやぎ6次産業化リノベーション支援事業に参加した企業の1つです。震災により津波被害を受けた農地を引き受け、仙台平野の水田を復興させ、安心安全なお米や農産物を育て上げています。また、育てたお米を使った農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」を運営や、神屋敷地域で培われてきた味噌づくりを体験できる「みそづくりワークショップ」を開催など、6次産業化を目指す企業の手本となる企業です。今回は理事を務めていらっしゃる佐々木こづ恵氏に様々な質問をしてきましたので、全4回にわたって紹介して参ります。

みやぎ6次産業化リノベーション支援事業

Q支援事業へ参加したきっかけは何ですか?

これまで色々なことを私一人で決めてしまっていたので、今回はスタッフと一緒に連携して新しい「糀のワークショップ」を始めようと思い参加を決めました。計画立案から実践までスタッフを巻き込んでやってみたいという思いと、私自身のスキルアップも兼ねて挑戦してみました。

元々、みそづくりワークショップは例年人気のイベントとなっていて、毎回定員オーバーです。毎年来てくださるお客様も多く、お知らせするとすぐに予約が埋まってしまいます。開催回数を増やしたいですが、味噌づくりは冬の時期にしかできません。そこで、夏にも何かイベントが出来ないかと考え、味噌と関連の深い糀を選びました。たまたま麹の機械を導入したタイミングでもあったので、機械を年間通して稼働させていきたいという思いもありました。

[画像:糀ワークショップテスト開催の様子]

Q実際に支援事業に参加してみてどうでしたか?

最終的に作成していただいた年間計画をスケジュール通りに進め、糀ワークショップのテスト開催も無事終了しました。順調に糀ワークショップの準備を社員みんなで一致団結しながら進めています。

支援事業に参加中は月に1回集まって会議をするという流れでしたが、それがルーティン化され、今でも月に1度会議を続けています。最初は会議が億劫な時もありましたが、習慣になってきたので、糀ワークショップのこと以外もみんなで集まって意見交換する良い時間になりました。会議の時にはランチ会として、麹を使ったレシピを試作してみんなで食べたり、それをInstagramに上げたりと交流の場にもなっています。普段互いに思っていても言えなかったことを話すこともでき、何か不満の声が上がったときには、それを改善したり、出来ない事はなぜ出来ないのか説明したりと互いの気づきの時間にもなっています。プロジェクトに対してはネガティブな意見はなく、社員のみんなも楽しそうにディスカッションしていました。

[画像: 糀を使用した試食用漬物]

[画像: 麹を使用して作った甘酒]

今回はみやぎ6次産業化の支援事業に参加したきっかけや効果についてお話しいただきました。

次回は、大人気みそづくりワークショップについてお伝えいたします!

【インタビュー企業関連HP】

仙台イーストカントリー:https://www.sendaieast.jp/

おにぎり茶屋ちかちゃん:https://www.pref.miyagi.jp/site/sdgt/noa5-chikchan.html

※令和6年度取材・投稿記事

直売所から学ぶ成功の秘訣!山元町のイチゴブランド化に見る売れる商品づくり

はじめに

宮城県山元町にある「やまもと夢いちごの郷」は、地域の特産品であるイチゴを中心に、直売所としての視点からブランド化や商品開発を推進し、地域を盛り上げている施設です。今回は、取締役支配人馬場健保さんと主任 貴志由寛さんに、消費者に最も近い直売所の視点から、売れる商品や地域特産品のブランディングのポイントについて教えていただきました。

直売所の視点から見るブランド化の成功要因

地域と行政の連携によるブランド化

「やまもと夢いちごの郷」は、直売所として山元町のイチゴを地域の復興シンボルとして位置付け、行政と連携しながらブランド化を進めてきました。震災により農作物の生産が滞ってしまっていましたが、このままではいけないと農家の皆さんが立ち上がり、イチゴの生産に力を入れ始めました。そこに行政が注力し、イチゴを中心としたブランディングが行われていきます。「やまもと夢いちごの郷」も最初はイチゴをメインに販売していたにもかかわらず、需要に対してイチゴが足りないという問題が発生していました。この問題を解決すべく行政とも連携し、結果として、直売所にイチゴを出荷してくれる農家さんの数が増加し、地域全体でのイチゴのブランディングと生産が可能になりました。馬場さんは、「イチゴをメインの軸としてぶれないでやってきた」と語り、直売所としての一貫した戦略が成功の鍵であると語ります。

メディアの力を活用したブランディング

メディアの力を活用することは、特産品の認知度を高める上で非常に効果的です。元サラリーマンの方が始めたイチジク栽培がメディアに取り上げられ、偶然「やまもと夢いちごの郷」が紹介されたことでさらに認知度が高まりました。ローカル番組にて紹介された日は問合せの電話が鳴りやまず、次の日には多くのお客様がいらっしゃったそうです。貴志さんは、「ここにも置いていますよ(販売していますよ)というPRをしたから問合せが増えた」と述べ、メディアを通じた情報発信は新たな顧客を引き寄せる大きな力を持っていることが分かります。

人気商品の作り方

農家による商品開発と直売所の役割、加工品の展開

商品開発は農家の皆さんが主体となって行い、直売所はその商品を消費者に届ける重要な役割を担っています。これまで農家の皆さんは、地域の特産品であるイチゴを活用し、ジャムやドライイチゴ、アイスクリームなどの加工品を開発してきました。人気がある加工品の共通点は3つ挙げられます。1つ目は保存が効くこと。2つ目は包装が工夫されていること。3つ目は味が想像つかない突飛なもの”でない”ことです。

1つ目・2つ目に関しては、お土産として誰かに配ることを想定して購入される方も多いため、保存が効き、小分けできるようなパッケージが好まれます。また、パッケージのデザインも重要です。貴志さんは、「カラフルで可愛い商品であれば、並べるときに彩があり購買意欲をそそる」と述べ、商品の魅力を引き出す工夫が重要であると強調しています。

3つ目に関して、消費者の動向や声を直接見聞きしている馬場さんは「美味しければいいけど、チャレンジしてみようという商品では続かない」と述べ、消費者の期待に応えることの重要性を指摘しています。

消費者ニーズの把握

消費者との直接的なコミュニケーション

直売所では、消費者との直接的なコミュニケーションを通じて、消費者ニーズを把握しています。また、農家の皆さんとも定期的に会議を行っており、直売所が情報共有の場になっています。これにより、消費者の声を迅速に農家に伝えることができ、商品改善や新商品の開発に役立てられています。
また、直売所のスタッフは日々の接客を通じて、消費者の反応や要望を直接聞くことができるため、リアルタイムで生産者へのフィードバックが可能です。さらに、入荷状況や商品の情報を消費者に伝えることもしています。例えば、今年のリンゴは猛暑のため全体的に柔らかいということが分かれば、貼り紙をし、朝礼でスタッフ全員に情報共有を行います。また、消費者からの「もっと小分けにしてほしい」「保存がきく商品が欲しい」といった具体的な要望は、商品ラインナップの見直しや新商品の開発に直結します。馬場さんは、「消費者の声を聞くことが、次の一手を考える上で非常に重要」と述べ、消費者との対話が持続的な商品改善の鍵であると語ります。

さいごに

「やまもと夢いちごの郷」の成功は、直売所としての視点から、地域と行政の連携、商品・品質へのこだわり、消費者とのコミュニケーションが鍵となっています。6次産業化に取り組む企業や生産者の皆様には、直売所の視点を活かし、消費者ニーズに応える商品開発を進めていただきたいと思います。地域の力を結集し、新しい価値を創出することで、持続可能な地域経済の発展を目指しましょう。

生産者の皆さんへ応援メッセージ

馬場さん:「季節やお客様の年代でニーズは変わります。早すぎるのも良くないし、押し売りするのも良くない。お客様のニーズに合ったものを開発することが間違いないです。」
貴志さん:「原材料が高くて大変だと思いますが、安くていいものをお客様は求めていますので、お互いに頑張っていきましょう。」

【取材協力】 山元町農水産物直売所やまもと夢いちごの郷 運営:やまもと地域振興公社
〒989-2111 宮城県亘理郡山元町坂元字荒井183-1
TEL:0223-38-1888 FAX:0223-38-1889 HP:https://yumeichigo.jp/

 

※令和6年度取材・投稿記事