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顧客データの集め方と活かし方:小さな直売所でも始められるリピーター育成術

はじめに

6次化で最も大切なのは、「一度買ってくれたお客様に、もう一度買ってもらうこと」です。新規顧客の獲得には時間もコストもかかりますが、リピーターは少ない労力で安定した売上を生み出してくれます。

そのために必要なのが顧客データです。「誰が」「何を」「いつ」買ったかを記録し、適切なタイミングで再アプローチする。難しいシステムは不要です。紙のノート、スプレッドシート、LINE公式アカウントなど、身近なツールで今日から始められます。

本コラムでは、小さな直売所やマルシェでも実践できる、顧客データの集め方と活かし方を具体的にお伝えします。

なぜ顧客データが必要なのか

リピーターがもたらす3つの価値

① 安定した売上

  • 新規顧客:来るかどうか分からない
  • リピーター:定期的に買ってくれる

② 口コミ・紹介

  • 満足したリピーターは、友人・家族に勧めてくれる
  • SNSでシェアしてくれる可能性も高い

③ 商品改善のヒント

  • 何度も買ってくれる人の声は、商品開発の宝庫
  • 「こんな商品があったら」という要望が次のヒットにつながる

データがないと起こること

  • 誰がリピーターか分からない
  • 新商品の案内ができない
  • 季節商品の販売時期を逃す
  • 常連さんに特別感を提供できない

顧客データは、リピーター育成の土台です。

集めるべき顧客データの基本

最初から完璧を目指す必要はありません。まずは最低限の情報から始めましょう。

【必須】最低限集めたい情報

  1. 名前(ニックネームでもOK)
  2. 連絡先(メール、LINE、電話のいずれか)
  3. 購入日
  4. 購入商品

【推奨】余裕があれば集めたい情報

  1. 購入のきっかけ(SNS、紹介、通りがかりなど)
  2. 好みや要望(甘さ控えめが好き、ギフト用途など)
  3. 誕生月(バースデー特典を送れる)
  4. 住所(地域別の傾向分析、DM送付)

集めてはいけない情報

  • 必要以上の個人情報(年収、家族構成など)
  • 本人の同意なく第三者に提供する前提の情報

ポイント:「何のために使うか」を明確にし、お客様に説明できる範囲で集める

販路別顧客データの集め方

【直売所・道の駅】

課題:委託販売のため、購入者と直接接点がない

解決策①:QRコードでLINE登録を促す

  • 商品パッケージやPOPにQRコードを貼る
  • 「新商品情報やお得情報をLINEでお届け」と案内
  • 登録特典(次回10%オフクーポンなど)をつける

解決策②:アンケートカードを同梱

  • 「ご感想をお聞かせください」と小さなカードを入れる
  • QRコードまたはメールアドレスで回答を受け付ける
  • 回答者に次回使えるクーポンをプレゼント

解決策③:レジ横にチラシ・名刺を置く

  • SNSアカウント、LINE、ホームページのURLを記載
  • 「フォローで限定情報をお届け」と訴求

【マルシェ・イベント出店】

メリット:対面なので、直接声をかけられる

方法①:購入時に声かけ

  • 「次回の出店情報をLINEでお送りしてもいいですか?」
  • その場でQRコードを読み取ってもらう

方法②:名刺交換

  • 購入者に名刺を渡し、「よかったら連絡先を教えてください」
  • 簡単なメモ用紙に名前・連絡先を書いてもらう

方法③:スタンプカード

  • 「3回購入で1個プレゼント」などの特典
  • カードに名前・連絡先欄を設け、初回に記入してもらう

方法④:試食・プレゼント企画

  • 「アンケートに答えてくれた方に試食プレゼント」
  • 簡単な質問(好みの味、購入頻度など)と連絡先を記入してもらう

【EC(ネット販売)】

メリット:購入時に自動的にデータが蓄積される

活用できるデータ

  • 氏名、住所、メールアドレス
  • 購入日、購入商品、購入金額
  • リピート回数、購入間隔

追加で集める方法

  • 購入後のサンクスメールで簡単なアンケートを依頼
  • レビュー投稿を促す(特典付き)
  • LINE登録を案内(「次回使える500円クーポン」など)

【卸(小売店・飲食店経由)】

課題:エンドユーザーと直接接点がない

解決策①:店頭POPにQRコード

  • 卸先の店舗に「生産者の情報はこちら」とQRコード付きPOPを設置してもらう

解決策②:パッケージにSNS情報

  • Instagram、Facebook、LINEのアカウント名を記載
  • 「作り手の日常を発信中」と興味を引く

解決策③:卸先との情報共有

  • 「お客様の声があれば教えてください」と依頼
  • 売れ筋商品、要望、クレームなどを定期的にヒアリング

顧客データの管理方法

【初級】紙のノート・カード

メリット

  • すぐ始められる
  • デジタルが苦手でもOK

デメリット

  • 検索しにくい
  • 紛失リスク

使い方

  • 1人1ページで記録
  • 購入日、商品、メモを時系列で追記

【中級】スプレッドシート(Excel・Googleスプレッドシート)

メリット

  • 無料で使える
  • 並び替え・検索が簡単
  • 複数人で共有できる(Googleスプレッドシート)

デメリット

  • 入力の手間がかかる
  • 自動化には限界がある

基本の項目例

顧客ID 名前 連絡先 初回購入日 最終購入日 購入回数 購入商品 メモ
001 佐藤さん sato@example.com 2025/10/5 2026/1/12 3回 ジャム、シフォン 甘さ控えめ好き
002 鈴木さん LINE: suzuki123 2025/11/20 2025/11/20 1回 ピクルス ギフト用途

運用のコツ

  • 販売後、その日のうちに入力
  • 月1回、データを見直して傾向を確認

【上級①】LINE公式アカウント

メリット

  • 顧客が使い慣れている
  • メッセージ配信が簡単
  • クーポン、予約機能も使える

デメリット

  • 月200通まで無料、それ以上は有料(2026年1月時点)
  • 登録してもらう工夫が必要

活用方法

  1. 友だち登録を促す
    • QRコード、チラシ、SNSで案内
    • 登録特典(クーポン、限定情報)をつける
  2. セグメント配信
    • 「ジャム購入者」「マルシェで会った人」など、タグで分類
    • 関心に合わせた情報を送る
  3. リッチメニュー活用
    • 商品一覧、予約、お問い合わせをボタン化
  4. アンケート機能
    • 新商品の意見募集、満足度調査

【上級②】CRM・顧客管理ツール

:kintone、Salesforce、HubSpot、Zoho CRM

メリット

  • 高度な分析・自動化が可能
  • 購入履歴、メール配信、タスク管理を一元化

デメリット

  • 月額費用がかかる(数千円〜数万円)
  • 設定・運用に学習コストがかかる

向いている事業者

  • 顧客数が数百人以上
  • 複数スタッフで管理
  • EC・卸・直売など複数販路を統合管理したい

顧客データの活かし方

データを集めただけでは意味がありません。リピート購入につながる行動を起こしましょう。

① 定期的な情報発信

頻度の目安

  • 月1〜2回(多すぎると嫌がられる)
  • 季節の変わり目、新商品発売時

配信内容の例

  • 新商品のお知らせ
  • 季節限定商品の販売開始
  • マルシェ・イベント出店情報
  • レシピ・食べ方の提案
  • 生産者の日常、畑の様子

ポイント

  • 売り込みばかりにしない
  • 「役立つ情報」「楽しい情報」を8割、「販促」を2割

② リピーター限定の特典

  • 2回目購入で10%オフ
  • 誕生月にバースデークーポン
  • 常連さん限定の先行販売
  • 「いつもありがとうございます」の手書きメッセージ

効果

  • 特別感が生まれ、ファン化が進む
  • 「また買おう」という動機づけになる

③ 購入サイクルに合わせたアプローチ

  • ジャムを買った人に、1ヶ月後「そろそろなくなる頃では?」とメッセージ
  • 季節商品を買った人に、翌年の同時期に「今年も販売開始しました」

やり方

  • スプレッドシートで「最終購入日」を管理
  • 30日後、60日後など、タイミングを見て連絡

④ アンケート・ヒアリング

質問例

  • どの商品が一番好きですか?
  • こんな商品があったら買いたいですか?
  • 改善してほしい点はありますか?
  • どこで知りましたか?

活用方法

  • 新商品開発のヒントにする
  • 人気商品を増産、不人気商品を見直し
  • お客様の声をSNSやPOPで紹介(許可を得て)

⑤ セグメント別のアプローチ

セグメント例

  • 初回購入者:「ありがとうございました。次回使えるクーポンです」
  • リピーター:「いつもありがとうございます。新商品をご案内」
  • 休眠顧客(3ヶ月以上購入なし):「お久しぶりです。季節限定商品が出ました」

効果

  • 一斉配信より、反応率が高い
  • 顧客に「自分に合った情報」と感じてもらえる

よくある失敗と対策

失敗①:データを集めたまま放置

対策

  • 月1回、必ず何かしらの配信をする
  • カレンダーに「顧客対応日」を設定

失敗②:売り込みばかりで嫌がられる

対策

  • 「役立つ情報8割、販促2割」を意識
  • レシピ、生産者の日常、季節の話題など、楽しめる内容を混ぜる

失敗③:個人情報の管理が甘い

対策

  • スプレッドシートにパスワードをかける
  • 紙の記録は鍵付き引き出しに保管
  • 第三者に見せない、勝手に使わない

失敗④:データ入力が続かない

対策

  • 販売後すぐに入力する習慣をつける
  • 入力項目を最小限にする(名前、連絡先、購入日、商品だけでもOK)

今日から始める5ステップ

ステップ1:目標を決める

  • 「3ヶ月で顧客データ30件」など、具体的な数字を設定

ステップ2:ツールを選ぶ

  • 初心者:紙のノートまたはスプレッドシート
  • 慣れてきたら:LINE公式アカウント

ステップ3:集め方を決める

  • QRコード、アンケートカード、声かけなど、自分に合った方法

ステップ4:特典を用意

  • 登録・記入してもらうための「お礼」を考える(クーポン、試食など)

ステップ5:月1回、必ず連絡する

  • 新商品、出店情報、レシピなど、何でもOK
  • 「忘れられない」ことが大切

さいごに

リピーター育成は、「関係を続ける」ことです。一度買ってくれたお客様に、忘れられないように、定期的に顔を出す。新商品を案内する。感謝を伝える。

難しいシステムは不要です。紙のノート、スプレッドシート、LINEで十分。大切なのは、小さく始めて、続けること

まずは、10人の連絡先を集めることから。その10人が、あなたの事業を支える最初のファンになります。

新規顧客を追いかけるより、目の前のお客様を大切に。
その積み重ねが、持続可能な売上を生み出します。

 

後編:布田ファームの挑戦 ~農福連携×販路×発信で「続ける・育てる」

はじめに

「株式会社布田ファーム(Irodori.Kitchen)」は宮城県岩沼市にあるお米ときゅうりをメインに生産している農家です。自身で育てたお米や季節野菜を使い、米粉スイーツや総菜を製造・販売しています。また、障害者就労支援B型事業所の施設外就労を受け入れています。今回も、主にきゅうりの生産などを手掛ける布田幸子さんと2児の母で農家に嫁いできたこときっかけに加工業を始めた布田彩さんにお話しを伺いました。

後半では農福連携や販促について、そしてこれから6次産業化を目指す生産者へのメッセージをお届けします。

農福連携(障害者就労支援B型)で季節のボトルネックを解消

Q.連携のきっかけと、軌道に乗るまでの流れは?

(幸子さんは)介護・障害者施設の生活支援員として働いた経験があり、皆さんの仕事ぶりを知っていました。きゅうりを始めた当初から来てもらいましたが、重量・長さなどの規格ごとの仕分けは難度が高く、最初はうまく連携できない場面もありました。そこで市役所紹介の「農福連携セミナー」に参加し、「きゅうりに時間を取られて他の畑仕事ができない」という課題を共有。間に入ってくれたNPO法人の方から障害者就労支援B型事業所を紹介いただき、工賃などを取り決めて正式に連携を開始しました。

Q.現在、どのような作業を担ってもらっている?

草取りや大根の収穫・洗浄・袋詰め、種まき、白菜の管理など畑全般をB型の皆さんが担当。私たちはきゅうりに専念できる体制です。ピーク期(6月中旬〜)に手薄になる夏野菜(オクラなど)の種まきから定植までを任せられるようになり、夏場の収入確保につながっています。

販路と発信―SNSとマルシェで「見つけてもらう」

Q.SNSを始めた狙いと工夫は?

取り組みを知ってもらう手段が少なかったため、写真中心のInstagramが集客に最もつながると考え、ビジネスアカウントを開設しました。なかなか投稿できない時もありますが、イベント情報や販売スケジュールを見やすく投稿するよう心掛けています。先輩農家さんや6次化に取り組んでいる皆さんのデザイン・見せ方も参考にしながら無理なく続けています。

Instagramはこちらから!

株式会社布田ファーム @fuda_farm

Irodori.kitchen(加工部門) @iro.k_iwanuma

Q.マルシェ出店時のお客様の反応は?

「米粉100%」「県内産中心の原材料」を求める方が多く、グルテンフリー志向のお客様にも喜ばれます。試食後のリピート購入や「小さな子にも食べやすい(はちみつ不使用)」という声が励みです。他のマルシェ参加者さんの包装の仕方や商品などを見て気づくことも多く、情報収集と学びの場としても有効だと感じています。

支援事業で得たことと、6次化への実践ポイント

Q.印象に残った支援は?

事業計画・メニュー開発・機器選定・衛生指導まで、立ち上げに必要な要素を一気通貫で伴走いただけたこと。自分たちだけでは分からないまま続けてしまう部分をプロの視点で補ってもらえました。規格外きゅうりの価値化(ピクルス)も、その延長線上の成果です。

Q.6次化に挑む生産者へメッセージをお願いします。

「やりたいことを言語化して発信する」ことが第一歩です。補助事業の活用や人脈の広がりはそこから生まれます。外部の力を借りれば実現できることは増えますし、情報収集もしやすい時代です。面白そう・食べてみたいと感じたらアンテナを張って動くことが大切です。情報発信と学びの両輪で、少しずつでも前進するのが大切だと思います。


布田ファームの歩みは、身近な資源を丁寧に磨き、外部の力も取り込みながら「できること」を積み重ねていく実践例です。これから6次化に踏み出す方のご参考になりましたら幸いです。

[インタビュー企業紹介]

株式会社布田ファーム Instagram @fuda_farm

Irodori.kitchen(加工部門) Instagram @iro.k_iwanuma

前編:布田ファームの挑戦 ~地域資源×加工×支援で「はじめの一歩」を形に

はじめに

「株式会社布田ファーム(Irodori.Kitchen)」は宮城県岩沼市にあるお米ときゅうりをメインに生産している農家です。自身で育てたお米や季節野菜を使い、米粉スイーツや総菜を製造・販売しています。また、障害者就労支援B型事業所の施設外就労を受け入れています。今回は、主にきゅうりの生産などを手掛ける布田幸子さんと2児の母で農家に嫁いできたこときっかけに加工業を始めた布田彩さんにお話しを伺いました。

支援事業参加の背景と、加工のきっかけ

Q.支援事業へ参加したきっかけは何ですか?

加工場の設整備と機材導入の補助金に応募した際、加工を本格化するには食品衛生の指導が不可欠だと考え、衛生面の支援も合わせて申請しました。

Q.実際に参加してみてどうでしたか?

経営の事業計画づくりから着手しました。メニュー開発は料理研究家の佐藤千佳さんにご指導いただき、機材面はホシザキさんの協力で、規格外きゅうりのピクルスが製品化しました。味のベースは先生のレシピを起点に派生していっています。プロの知見と機械の使い方まで伴走いただけたのが大きかったです。

Q.加工を始めた経緯は?

原点は幸子さんが作っていたシフォンケーキがきっかけです。「Komeco.Factory」という屋号でした。米価が安い時期に「付加価値をつけたい」と考え、直売所(ハナトピア岩沼)で小さく販売していました。彩さんが結婚を機に家に入り、妊娠中にきゅうり栽培を手伝いながら米粉菓子の製造も開始しました。お客様の定着と需要増に伴い、プレハブの小さな加工場では限界が見え、市役所に相談。支援制度の紹介を受け、現在のIrodori.Kitchenへ発展しました。

地域食材へのこだわりと、行政との橋渡し

Q.事業を進めるうえで大事にしていることは?

「なるべく地域の食材を使う」ことです。自分たちの米・きゅうりを軸に、ハナトピア岩沼時代から付き合いのある生産者さんの農産物を仕入れます。りんご・姫りんご・ゆず・しいたけ・いちじくなど旬の食材を取り入れ、季節ごとの美味しさを商品に生かしています。


後編では農福連携や販促について、そしてこれから6次産業化を目指す生産者へのメッセージをお届けします!

[インタビュー企業紹介]

株式会社布田ファーム Instagram @fuda_farm

Irodori.Kitchen(加工部門) Instagram @iro.k_iwanuma

庄福丸の挑戦 ~漁業の未来を切り拓く~

 

はじめに

「株式会社庄福丸」は、宮城県亘理町を拠点とし代々海と共に暮らし漁業を営んできました。漁獲から加工・製造、流通までを自社で行い、時代の荒波に負けない強い魚食文化を作ることを目指しています。今回は、先代から事業を引き継いだ加工部門責任者 清水谷結香さんに庄福丸の取り組みや6次産業化への挑戦についてお話を伺いました。

支援事業について

Q.支援事業へ参加したきっかけは何ですか?

支援事業に参加したのは令和3年度、コロナ禍で消費が落ち込み魚に値段がつかない厳しい時期でした。競りを開いても魚が売れず、どうにかしなければならない状況の中で加工に力を入れることを決意し、頭や鱗を落とすなどの簡単な加工しかしていなかったところから、弁当惣菜などの本格的な加工に取り組み始めました。

また、HACCP(食品衛生管理システム)の法律が厳しくなり、経営の知識が乏しい中で事業を継承するタイミングだったこともあり、支援事業を「駆け込み寺」として活用しました。

Q.実際に支援事業に参加してみてどうでしたか?

支援事業では、経営の基礎を学び、黒字化に向けたシートを作成してもらいました。例えば、黒字にするにはいくら売らなければならないか、産直事業をどう進めるべきかなど、具体的な指導を受けました。さらに、飲食店とのマッチングを通じて販路を拡大し、仙台を中心に約30店舗に新鮮な魚を届けることができるようになりました。

ただし、支援事業の初期段階では、事前のすり合わせが不足していたため、方向性がズレることもありました。もっと要望を出していれば、さらにスムーズに進められたかもしれません。それでも、売上は伸び徐々に成果を上げています。

漁業の強みを活かす

Q.漁業の強みをどのように活かしていますか?

漁師の最大の強みは「鮮度」です。低未利用魚などの市場に出回らないような魚を飲食店に直売することで、安く新鮮な魚を届けることができます。特に「神経締め」といった高鮮度処理を施しており、魚の細胞を生かし旨味成分を守ることで、切り身の鮮度が1週間後でも保たれるようにしています。

また、一般の消費者の方や飲食店の方に漁業の現場を知ってもらうことも大切にしています。浜の風景や漁の様子を見てもらうことで、食材としてのストーリーに深みが増し、魚を食べる際の受け取り方が変わると感じています。また、漁業の過酷さや面白さを知ってもらうことで、魚食文化をより身近なものにしていきたいと思っています。

イベントや食育を通じた地域貢献

Q.イベントや食育の取り組みについて教えてください。

漁業者として、地域のイベントに積極的に参加しています。例えば、わたりふるさと夏祭りでは、低未利用魚などの漁業の現場で扱いにくい魚を、お弁当やお惣菜などの加工品として販売しています。夏場は魚が獲れない季節ですが、イベント販売などで売り上げを補っています。

また、保育園での食育授業にも取り組んでいます。管理栄養士の方とのつながりをきっかけに、子どもたちに魚を食べる楽しさを伝える活動を2年間続けています。漁師としての経験を活かし、漁の様子や海の現状、実際に水揚げした魚を使って魚の特徴や内臓の説明を伝えており、魚の命をいただき、食卓に上がるまでの過程を知ってもらうことを大切にしています。

 

大切にしていること

Q.事業を進める中で一番大切にしていることは何ですか?

私たちは「現場主義」を大切にしています。漁業の現場を知ることで、魚を食べる際の価値が変わると信じています。私自身も船に乗るまで漁業の過酷さや面白さを知らず、現場を見て初めてその魅力に気づきました。また、魚離れが進む中で、魚のさばき方や食べ方を伝え、魚を身近な存在にすることが重要だと考えています。イベントや食育を通じて、魚食文化を次世代に繋げていきたいと思っています。

6次産業化を目指す生産者へのメッセージ

Q.6次産業化に取り組む生産者へ応援メッセージをお願いします。

6次産業化を進める上で、今まで対面していなかった消費者と向き合うことになるので、考える頭は多い方がいいと思います。漁業の専門知識がない方でも、知らないからこその意見が新たな視点を与えてくれることがあります。支援事業に参加したことで、たくさんの意見をもらい、浜の視点だけでなく様々な立場の消費者の声や気づきを得ることができました。

試しにやってみようくらいの気持ちで応募してみることが、次のステップへのきっかけになるかもしれません。色々な人の知恵を借りてアイデアを出すことで、進むべき道が見えてくるはずです。

最後に

庄福丸の挑戦が、漁業の可能性を広げる新たなロールモデルとなることを期待しています。鮮度へのこだわりや、イベント・食育を通じた地域貢献は、漁業の枠を超えた価値を生み出しています。

6次産業化は、地域資源を活かしながら持続可能な事業を実現するための重要なステップです。産業のベースであり、人々の生活を食の面から支える一次産業の担い手として、これからも地域の活性化に貢献したいと思います。庄福丸の取り組みが地域課題の解決の一例になれば幸いです。

[インタビュー企業]

株式会社庄福丸

HP:https://www.shofukumaru-watari.com/

Instagram:@shofukumaru_watari

 

販路開拓の基本戦略:直売所・EC・卸・マルシェ…それぞれの特性と収益構造を理解する

はじめに

6次産業化で商品を作ったら、次は「どこで売るか」が最大の課題です。直売所、EC、卸、マルシェ…それぞれに手数料も客層も求められる商品特性も違います。「とりあえず全部やってみる」では、労力ばかりかかって利益が残りません。

大切なのは、各販路の収益構造を理解し、自社の商品・体制に合った販路ミックスを設計することです。本コラムでは、主要4販路の特性を整理し、どう組み合わせれば持続可能な売上が作れるかを、現場目線でお伝えします。

販路選択の基本的な考え方

販路を選ぶ前に、まず自社の状況を整理しましょう。

① 自社の現状を把握する

  • 生産能力:週・月にどれだけ作れるか
  • 在庫の持ち方:受注生産か、作り置きか
  • 賞味期限:短い(数日)か、長い(数週間〜数ヶ月)か
  • 価格帯:単価が高いか、低いか
  • 人員体制:自分一人か、家族・スタッフがいるか
  • 物流対応:発送作業ができるか、配送コストをどう吸収するか

② 販路ごとの「相性」を見極める

すべての販路が自社に合うわけではありません。商品特性・体制・目標利益に応じて、優先順位をつけることが成功の鍵です。

主要4販路の特性と収益構造

【販路①】直売所・道の駅

特徴

  • 地元客・観光客が中心
  • 対面販売ではなく、委託販売が主流
  • 商品を並べたら、あとは売場に任せる

収益構造

  • 手数料:売上の10〜20%(施設により異なる)
  • 価格設定:自分で決められる
  • 入金サイクル:月1〜2回の精算が一般的

求められる商品

  • 地域性・季節感がある
  • パッケージが目を引く(対面説明がないため)
  • 賞味期限が比較的長い(数日〜1週間以上)
  • 価格帯:500〜1,500円程度が中心

メリット

  • 初期投資が少ない(棚代・出店料が不要または低額)
  • 自分で接客しなくてよい
  • 地元での認知が広がる

デメリット

  • 売れ残りリスクは自己負担
  • 陳列スペースが限られる
  • 他の出品者との競合が激しい

向いている事業者

  • 生産量が安定している
  • パッケージや見せ方に工夫ができる
  • 定期的に商品を補充できる体制がある

【販路②】EC(ネット販売)

特徴

  • 全国の顧客にリーチできる
  • 24時間365日、販売機会がある
  • 自社サイト、楽天・Yahoo!などのモール、BASE・STORESなどの簡易ECがある

収益構造

  • 手数料
    • モール型(楽天・Yahoo!):売上の5〜15%+月額固定費
    • 簡易EC(BASE・STORES):売上の3〜5%程度
    • 自社サイト:決済手数料のみ(3〜4%)
  • 送料:顧客負担か、自己負担か(または一部負担)
  • 梱包資材費:1件あたり50〜200円程度

求められる商品

  • 写真・説明文で魅力が伝わる
  • 配送に耐える(割れ・潰れにくい)
  • 賞味期限が長い、または冷凍・冷蔵配送に対応
  • 価格帯:送料を考慮すると2,000円以上が望ましい

メリット

  • 地理的制約がない
  • リピーター育成がしやすい(メール・LINE配信)
  • 顧客データが蓄積できる

デメリット

  • 集客に時間とコストがかかる(SNS・広告が必要)
  • 梱包・発送作業が発生
  • 送料負担が大きい(特に単品・小ロット)

向いている事業者

  • 商品ストーリーや世界観を伝えたい
  • リピーター育成に力を入れたい
  • 発送作業を定期的にこなせる体制がある

【販路③】卸(小売店・飲食店への販売)

特徴

  • まとまった数量を定期的に納品
  • 小売店・カフェ・レストランなどが取引先
  • 自分で売る手間がかからない

収益構造

  • 卸値:小売価格の50〜70%が一般的
    • 例:小売価格1,000円 → 卸値600〜700円
  • 支払いサイト:月末締め翌月末払いなど、入金まで時間がかかる
  • 返品リスク:契約により異なる

求められる商品

  • 安定供給ができる(欠品が許されない)
  • 賞味期限が長い
  • ロット対応ができる(週◯個、月◯個など)
  • 品質が均一

メリット

  • 一度取引が始まれば、安定した売上が見込める
  • 自分で販売しなくてよい
  • ブランド認知が広がる

デメリット

  • 粗利率が低い(直売の半分程度)
  • 生産計画・在庫管理が必須
  • 取引先の倒産・契約終了リスク

向いている事業者

  • 生産能力に余裕がある
  • 安定供給できる体制が整っている
  • 粗利率が低くても、量でカバーできる

【販路④】マルシェ・イベント出店

特徴

  • 対面で直接販売
  • 顧客の反応がリアルタイムで分かる
  • 週末・月1回など、不定期開催が多い

収益構造

  • 出店料:1回3,000〜10,000円程度
  • 価格設定:自分で決められる
  • 売上:当日の天候・集客に左右される

求められる商品

  • その場で試食・説明ができる
  • 持ち帰りやすい(重すぎない、壊れにくい)
  • 価格帯:500〜2,000円程度(その場で買いやすい金額)

メリット

  • 顧客と直接対話できる(ファン化しやすい)
  • 商品の反応を即座に確認できる
  • SNSフォロワー獲得のチャンス

デメリット

  • 準備・当日対応・片付けに時間がかかる
  • 天候・集客に売上が左右される
  • 出店料が固定費としてかかる

向いている事業者

  • 商品のストーリーを直接伝えたい
  • テスト販売・新商品の反応を見たい
  • ファンづくり・ブランディングを重視

販路別の利益率を比較する

同じ商品でも、販路によって手元に残る利益は大きく変わります。

例:シフォンケーキ1個(単位原価470円)

販路 販売価格 手数料・経費 粗利益 粗利率
直売所 800円 120円(手数料15%) 210円 26%
EC 800円 190円(手数料5%+送料150円) 140円 18%
560円 0円 90円 16%
マルシェ 800円 50円(出店料を1個あたりに按分) 280円 35%

※送料・出店料の按分方法により変動します

ポイント

  • 粗利率が高い=良い販路ではありません
  • 卸は粗利率が低くても、まとまった数量が安定的に売れる
  • ECは送料負担が大きいが、全国にリーチできる
  • マルシェは粗利率が高いが、労力と時間がかかる

販路ミックスの設計

複数の販路を組み合わせることで、リスク分散と売上最大化を図ります。

① 成長段階に応じた販路戦略

【立ち上げ期】

  • 優先販路:直売所、マルシェ
  • 目的:顧客の反応を見る、認知を広げる、商品を磨く
  • 売上目標:月5〜10万円

【成長期】

  • 優先販路:直売所+EC、または卸1〜2社
  • 目的:リピーター育成、安定供給の仕組み作り
  • 売上目標:月20〜50万円

【安定期】

  • 優先販路:卸中心+EC、直売所は補完的に
  • 目的:効率化、利益率の向上
  • 売上目標:月50万円以上

② 販路ミックスの例

パターンA:少量多品種型(個人事業者)

  • 直売所 50%
  • マルシェ 30%
  • EC 20%

→ 自分のペースで作り、対面販売でファンを増やす

パターンB:安定供給型(法人・グループ)

  • 卸 60%
  • 直売所 30%
  • EC 10%

→ 卸で安定売上を確保し、直売・ECでブランド育成

パターンC:EC特化型

  • EC 80%
  • マルシェ 20%(認知・ファン獲得)

→ 全国展開を目指し、リピーター育成に注力


販路開拓の実務ステップ

① 直売所・道の駅への出品

  1. 施設に問い合わせ:出品条件、手数料、精算サイクルを確認
  2. サンプル持参:商品を見せて、担当者と相談
  3. 出品契約:必要書類(営業許可証のコピーなど)を提出
  4. 初回納品:少量から始め、売れ行きを観察
  5. 定期補充:売れ筋を増やし、動きの悪い商品は入れ替え

② ECサイトの立ち上げ

  1. プラットフォーム選定:BASE・STORES(簡単)、楽天・Yahoo!(集客力)、自社サイト(自由度)
  2. 商品撮影:自然光で、複数アングル
  3. 商品説明文:原材料、サイズ、賞味期限、保存方法、食べ方を明記
  4. 配送設定:送料、配送方法、梱包方法を決める
  5. 集客:SNS、ブログ、広告で認知を広げる

③ 卸先の開拓

  1. ターゲット選定:自社商品と相性の良い店舗をリストアップ
  2. アポイント:電話またはメールで商談の約束
  3. サンプル提供:試食・試用してもらう
  4. 条件交渉:卸値、納品頻度、支払いサイト、返品条件
  5. 契約・初回納品:書面で条件を確認し、納品開始

④ マルシェ・イベント出店

  1. イベント情報収集:自治体、商工会、SNSで情報を探す
  2. 出店申込:主催者に連絡し、出店料・条件を確認
  3. 準備:テント、テーブル、POP、釣銭、梱包資材
  4. 当日販売:笑顔で接客、名刺・チラシ・SNS案内を配布
  5. 振り返り:売上、顧客の反応、改善点を記録

販路ごとの成功ポイント

直売所で売れるコツ

  • 目立つパッケージ:棚に並んだとき、手に取られやすいデザイン
  • POP活用:「地元◯◯産」「今週限定」など、一言で価値を伝える
  • 定期補充:欠品させない、鮮度を保つ

ECで売れるコツ

  • 写真の質:プロ並みでなくても、明るく清潔感のある写真
  • レビュー獲得:初回購入者に「感想をお願いします」と声かけ
  • リピート施策:メルマガ、LINE、次回クーポンでつなぎ止める

卸で信頼を得るコツ

  • 納期厳守:約束した日時に必ず納品
  • 品質の均一性:ばらつきを最小限に
  • コミュニケーション:売れ行きを聞き、改善提案をする

マルシェで印象を残すコツ

  • 試食・試飲:味を知ってもらうのが最強
  • ストーリーを語る:「この野菜は◯◯さんの畑で」など、背景を伝える
  • 次につなげる:SNSフォロー、次回出店日の案内

よくある失敗パターンと対策

失敗①:すべての販路に手を出して疲弊

対策:まずは1〜2販路に絞り、仕組みを作ってから拡大

失敗②:粗利率だけで販路を選ぶ

対策:労力・時間・安定性も含めて総合判断

失敗③:在庫を持ちすぎて廃棄が増える

対策:受注生産、または少量多頻度生産で調整

失敗④:顧客データを取らずに売りっぱなし

対策:どの販路でも、リピートにつながる導線を作る(LINE登録、次回案内など)


販路開拓のチェックリスト

新しい販路を始める前に、以下を確認しましょう。

  •  手数料・経費を含めた粗利益を計算したか
  •  生産能力・納品頻度に無理がないか
  •  賞味期限・配送方法は対応可能か
  •  顧客層と自社商品の相性は良いか
  •  リピート・ファン化の導線を設計したか
  •  撤退基準を決めたか(◯ヶ月やって売上◯万円以下なら見直し)

さいごに

販路開拓は、「選ぶ」ことと「組み合わせる」ことの両方が大切です。すべての販路に全力投球するのではなく、自社の商品・体制・目標に合った販路を見極め、段階的に広げていく。

まずは1つの販路で小さく成功体験を作り、そこで得た学びを次の販路に活かす。この積み重ねが、持続可能な売上を生み出します。

売れる場所を増やすのではなく、売れる仕組みを作る。
その視点で、あなたの販路戦略を一歩ずつ前に進めていきましょう。

 

リロカリコクリの挑戦 ~「田舎で創り田舎で過ごそう」を事業にする、共創型6次化モデル~

はじめに

「リロカリコクリ株式会社」は宮城県加美郡加美町に位置する企業です。空き家の維持・管理、サテライトオフィスの運営、地場産品の商品開発、そして農業を主軸にした地域貢献・振興まで、地域課題の解決に関わる事業を総合的に展開しています。今回はリロカリコクリ株式会社 代表取締役 米津岳さんにお話を伺いました。

【リロカリコクリとは】

Life Re-localization in Regional co-creationを略してリロカリコクリ。

地域共創における生活の地域回帰という意味の造語です。
「田舎で創り田舎で過ごそう」という思いが込められています。

支援事業参加の背景と、伴走支援で描いた拡張戦略

Q.支援事業に参加したきっかけは何ですか?

当時の委託担当の方から声をかけてもらったのがきっかけです。事業の継続・拡大の道筋に悩んでおり、専門家に伴走してもらいながら「今後どう事業を拡大していくか」を計画したかったタイミングでした。過疎地域に必要なのは「雇用」と「人材育成」。それを実現するには事業拡大が不可欠という前提で、一緒に拡張計画づくりを進めました。

Q.実際に参加してみてどうでしたか?

中小企業診断士の方と事業の実態や課題を具体的に議論できたのが大きかったです。厳しい指摘にイラっとする場面もありましたが、会社運営に真剣に向き合うきっかけになりました。理想と現実を見極めつつ「理想を突き詰めるために、実現計画を数字と行動に落とす」姿勢が定着しました。東北農都総研さん等とのつながりも生まれ、ビジネスマッチングなど事業面のサポートが今も続いています。この計画がなかったら売上1,000万円には届かなかったかなと思います。視野と実行力を広げる起点になりました。

事業の軸—“地域に必要とされるか”、そして“人を大切にする”

Q.事業を進めるうえで大切にしていることは何ですか?

「その地域にとって必要とされているか」を最重要の軸に置いています。同じくらい「社員を大切にする」ことも重視しています。法人である以上、社会貢献が目的です。その中に、社員を大切にする、地域課題を見つける、雇用を作る、人材育成をする—といったミッションが入ってきます。空き家の利活用、移住定住の支援、地場産品の開発、農業の実践も、すべて地域課題の解決に繋がる流れの中に位置づけています。

事業の柱—“地域と共に創る”3本のコア

Q.事業の柱は何ですか?

3つの柱で展開しています。

  • コクリ農園

CO-CREATION=共に創る

移住先の空き家に“広大な農地”が付いていたことがきっかけで、未経験ながら「とりあえずやってみよう」という精神で農業を始めました。主な作付けはさつまいも・じゃがいも。ほかにも少量多品目で年間約80種類の野菜を栽培しています(栽培期間中は農薬不使用)。思い通りに育たないもどかしさもありますが、自分で育てた野菜はやはり格別。畑で収穫したその場でかぶりつく—都会の皆さんにも体験してほしい“人生で一番贅沢”とも思える瞬間を、野菜と体験を通じて届けています。販売は地元直売所・マルシェ・インターネットを中心に行っています。

  • 空き家の維持管理

空き家は「悪者」ではありません。家はその時代、その生活を映す“鏡”のような存在。人が住まなくなると途端に痛みが進むからこそ、適切な維持管理で住み続けられる状態を保つことが重要です。所有者に代わり、空気の入れ替え・点検・簡易清掃などの管理を行い、家の思いを次へ“つむぐ”サポートをします。空き家の放置が景観・衛生・安全・防犯に及ぼす影響を踏まえ、「管理と利活用」へつなげる取り組みです。

  • 小野田SO(サテライトオフィス) Mow-Mow

元牛舎だった建物をリノベーションして誕生した宿泊できるオフィスです。自然豊かな環境の中で仕事に集中できるよう設計し、コワーキングスペースとしての一時利用や、移住体験としての宿泊利用も可能で、「田舎で創り田舎で過ごそう」を体感できる拠点として運営しています。

6次化を目指す方へ—“やめるな”、理想に数字と共創を

Q.6次化に挑戦する事業者・生産者へのアドバイスをお願いします。

一言で言えば「やめるな」です。できない、意味がない、売れない…と言われることもあると思います。それで諦めるくらいなら最初からやらない方がましです。多様な意見に振り回されすぎず、自分の“軸”に必要な要素を付け足しながら前へ進んでください。融資や資金調達を目指すなら「数字」は不可欠です。ただし、それだけでは不十分で「熱意」と「信頼」も同じくらい重要です。達成できると自分が本気で思えるかどうか。そのうえで、地域で6次化を進めるなら「地域と共に創る(共創)」ことが鍵になります。地域の人、行政、支援機関、事業者同士が課題と資源を持ち寄り、一緒に事業を形にする—競い合うより“共に創る”姿勢が持続性を生みます。


地域の課題を事業に変え、暮らしの基盤を強くする——リロカリコクリの実践は、6次化を地域と共に創るプロジェクトへ押し広げています。「田舎で創り田舎で過ごそう」という合言葉のもと、コクリ農園・空き家の維持管理・小野田SO Mow-Mowの三本柱が、人と仕事と住まいをつなぎ直していきます。これから地域資源の活用を考えている方は、是非リロカリコクリの取り組みを参考にしてみてください。次の一歩を踏み出すきっかけになりましたら幸いです。

【インタビュー企業】

リロカリコクリ株式会社

HP:https://re-localicocre.com/

Instagram

リロカリコクリ株式会社        @re_localicocre

小野田サテライトオフィスMow-Mow  @onoda.so.mow_mow

代表取締役 米津岳           @gyonezu

 

後編:自然卵農園の挑戦 ~震災からの再出発、働き方の受け皿、そして「やさしさ」で育てる6次化~

はじめに

「自然卵農園株式会社」は南三陸町に位置し、自社養鶏場にてこだわりの自然卵「卵皇(らおう)」を生産。また、「卵皇(らおう)」を核に、クレープやプリンなどの菓子を製造・販売している企業です。2004年のキッチンカーからスタートし、現在は青葉区五橋の「自然卵のクレープ 五橋店」と、南三陸町ハマーレ歌津商店街の工場兼店舗を運営。店舗運営に加え、卸売やフランチャイズ展開にも取り組んでいます。後編では、震災を乗り越え、自然養鶏と菓子づくりを融合させて歩んできた代表取締役 大沼あかねさんに、事業の起点などについて伺いました。

事業の始まりと震災—自然養鶏への転機

Q.事業を始めたきっかけは?

嫁ぎ先の商店街で夜市があり、そこでクレープを出したのが始まりです。当時(約30年前)は仙台以外でクレープが珍しく、2004年にキッチンカーを始めると子どもたちの行列ができました。

Q.震災後の歩みは?

2011年の東日本大震災で自宅やキッチンカー、全てを失いました。悩んだ末、自然養鶏に挑戦を決め、家族で北海道・江別市に移住して研修を受けました。研修2年目には小さなクレープ店も開店し、札幌近郊で受け入れられるか販売実習。2012年末に夫が先に帰郷し鶏舎準備、2013年4月に家族で帰省し就農しました。同年10月、南三陸町の復興商店街に空きが出て内装を自前で整え、11月に開店しました。

フランチャイズ展開—多様な働き方の受け皿に

Q.フランチャイズ化のきっかけは何ですか?

北海道の時のお店が最初のフランチャイジーです。働いていた女性が名乗りを上げ、フランチャイジーになってくださいました。その後も、「私もキッチンカーをやりたい」と主婦の方々からも声があり、徐々にフランチャイズ展開をしていきました。半数は主婦で、シングルマザーも多く、短時間で自分の時間を確保したいというニーズに合致しました。保証はありませんが、柔軟な働き方の選択肢になっています。

大切にしていること

Q.事業を進める中で、一番大切にしていることは?

「やさしさ」です。従業員は女性が多く(養鶏場は男性ですが)、細かな気遣いが良いサービスにつながると信じています。お客様にも、働く人にも、やさしい現場をつくることが事業の土台です。

6次化を目指す方へ

Q.生産者への応援メッセージをお願いします。

6次化は「小さく始められる」のが魅力です。商売になる・ならないに関係なく、まず一度作ってみる。今はレンタルキッチンもあり、試しやすい環境です。作って、どこかに持っていく。原料の良さを一番わかっているのは、生産者自身。あなたが作った商品が、いちばんおいしいはずです。

さいごに

震災を越えて生まれた自然卵「卵皇」と、素材を活かす職人技。そこに循環型の飼育と、現場を支える「やさしさ」が重なって、自然卵農園の6次化は強くやさしく前に進んできました。生産者だからこそ見える原料の良さを信じて、一歩を踏み出すきっかけとなりましたら幸いです。

 


[インタビュー企業]

自然卵農園株式会社

「自然卵農園菓子工房」 Instagram @sizentamago_kasikoubou

南三陸町ハマーレ歌津商店街内

https://hamare-utatsu.com/welcome/welcome.cgi?item=231128152020

 

「自然卵のクレープ 五橋店」 Instagram @ofm_szts

宮城県仙台市青葉区五橋2丁目11−18  第三ショーケービル壱号館1F

五橋駅(南出口1)より徒歩3分

前編:自然卵農園の挑戦 ~自然卵「卵皇」と職人技でつくる6次化モデル~

はじめに

「自然卵農園株式会社」は南三陸町に位置し、自社養鶏場にてこだわりの自然卵「卵皇(らおう)」を生産。また、「卵皇(らおう)」を核に、クレープやプリンなどの菓子を製造・販売している企業です。2004年のキッチンカーからスタートし、現在は青葉区五橋の「自然卵のクレープ 五橋店」と、南三陸町ハマーレ歌津商店街の工場兼店舗を運営。店舗運営に加え、卸売やフランチャイズ展開にも取り組んでいます。震災を乗り越え、自然養鶏と菓子づくりを融合させて歩んできた代表取締役 大沼あかねさんに、6次化の実践と商品づくりについてお話を伺いました。

支援事業参加の背景

Q.支援事業へ参加したきっかけは何ですか?

養鶏の拡大を目指していましたが、何から手をつければよいか分からず、専門家に伴走してもらいたいと思い参加しました。

Q.実際に参加してみてどうでしたか?

入口は「経営の見える化」でした。数字を見る習慣が根づき、経費の使い方など、意思決定の精度が上がりました。感覚だけに頼らず、事業の状態を数字で把握する重要性を実感しました。

自然卵「卵皇」へのこだわり

Q.「卵皇」へのこだわりは?

菓子づくりが原点なので「臭みを出さない卵」を目指しています。たっぷり運動させて卵白の弾力を引き出すこと、自由に歩ける飼育(平飼い)で健やかに育てること、餌にこだわることを大切にしています。一般に卵黄を濃厚にするため魚粉を使う場合がありますが、臭みの原因になり得るので、緑餌(生の草や野菜、葉物などの植物性飼料)を取り入れています。地域の農家さんから廃棄予定の野菜を譲っていただくなど、循環型の取り組みも重視しています。

菓子づくりの哲学—素材と職人技

Q.お菓子づくりで大切にしていることは何ですか?

「素材を活かすため、余計なものは入れない」ということです。一般に臭み消し目的で使うバニラエッセンスや、膨張剤(ベーキングパウダー)は使用しません。うちには強いメレンゲが立つ卵白があるので、シフォンケーキも膨張剤なしで焼き上げます。卵の強さは、鶏の運動量と餌がポイントです。

Q.技術面でのこだわりは?

一番大切にしているのは「職人技」。すべて手づくりで、湿度や生地の状態を肌感覚で調整します。例えばエンゼルフードケーキ(シフォンケーキの元祖)だと、工場に3人スタッフがいても、うちのクオリティで焼けるのは1人だけというような難しさがあるほど繊細です。卵も日により弾力が違うため、メレンゲの立て方も一定ではありません。経験に基づく微調整が品質を支えています。

Q.商品コンセプトは?

町の中の「ダサかわ」を狙っています。ちょっとダサいけどかわいい。素朴で、日持ちはしないけれど食べやすくおいしい。だからこそリピートしたくなる。派手さより“ずっと売れ続ける菓子屋”のイメージを大切にしています。


次回の後編では、事業の始まりと震災を経て自然養鶏へ転機を迎えた歩み、フランチャイズ展開、多様な働き方への貢献、そして6次化を目指す方へのメッセージをお届けします。

[インタビュー企業]

自然卵農園株式会社

「自然卵農園菓子工房」 Instagram @sizentamago_kasikoubou

南三陸町ハマーレ歌津商店街内

https://hamare-utatsu.com/welcome/welcome.cgi?item=231128152020

 

「自然卵のクレープ 五橋店」 Instagram @ofm_szts

宮城県仙台市青葉区五橋2丁目11−18  第三ショーケービル壱号館1F

五橋駅(南出口1)より徒歩3分

ブランドの未来:価値創造の新潮流

はじめに

いま、ブランドは「ロゴや広告」から「関係と共創」へと重心を移しています。生活者は情報に飽和し、価格や機能だけでは選ばなくなりました。選ばれるブランドは、地域や社会とのつながり、作り手の姿勢、体験、そして継続的な対話を通じて、価値を「一緒に育てる」ことに成功しています。6次産業化に取り組む皆さんにとって、この変化は追い風です。1次から3次までの機能を束ねる強みを、未来のブランドづくりにどう転換するか。新潮流の要点と実践のヒントをまとめます。

新潮流1:コミュニティ主導のブランドへ

  • モノ起点からコミュニティ起点へ。小さなファンの輪を大切に育てることが、結果的に価格決定権と安定した売上をもたらします。
  • 直売所や会員制度、定期便など「顔が見える接点」をつくる。生産者と販売者が同じ場所で声を聞けることは大きな資産になります。
  • コアファンに試作や限定品を先行体験してもらい、改善の共同制作者になってもらう。共創は愛着を生み、口コミの質を高めます。

新潮流2:ストーリーと証拠のセットで価値を伝える

  • PRストーリーは「主張」より「証拠」。原料の来歴、栽培のこだわり、選別の手間、フードロス削減への工夫など、価値の根拠を可視化します。
  • デジタルで補完する。QRコードから生産者の声や圃場の様子、商品に合うレシピへ誘導。体験を深める情報が購買後の満足とリピートに直結します。
  • インナー(社内)とアウター(社外)の一貫性が信頼を生む。現場スタッフが自信を持って語れる共通メッセージを整え、日々の接客で体現します。

新潮流3:小さなデータで大きく磨く

  • 巨大なマーケティング投資は不要。直売所の売場で観察できる「手に取られる順番」 「立ち止まり時間」 「質問の頻度」が宝のデータです。
  • 梱包や容量、価格帯を小刻みに試す。4パックから2パックへの変更、手持ち付きパッケージ、ギフト仕様などの工夫は即効性のある差別化要素。
  • STP(市場の切り分け・ターゲット選定・ポジショニング)を先に。誰に、何を、どう比べられたいかを明確にしたうえで、3Cや4Pを磨きます。

新潮流4:体験を重ねて価値を層にする

  • 商品の外側にサービスを重ねる。テイスティング、収穫体験、工房見学、レシピ同梱などは「記憶に残る接点」を増やします。
  • サブスクリプションや季節便で「待つ楽しみ」を設計。体験の継続設計は、一括の販促よりリピート率を押し上げます。
  • 訳あり・詰め放題のような楽しい企画は、廃棄削減と売場活性の両立に有効。ブランドの姿勢(もったいないを価値に変える)を体感してもらえます。

新潮流5:サステナビリティを「選ばれる理由」に

  • 環境配慮や地域貢献は“良いこと”から“価値そのもの”へ。具体的目標と数値の公開が説得力を持ちます。
  • 包装の簡素化、再生素材の活用、規格外品の活用をストーリー化。消費者は“正しい選択を手軽にできる”ブランドに惹かれます。
  • 再生型農業や地域循環をパートナーと共に推進。協業の見える化は、ブランドの信頼を階段状に引き上げます。

新潮流6:メディアの力を“設計”して使う

  • 地元メディア、専門誌、マイクロインフルエンサーは費用対効果が高いです。ニュース性(新規性・希少性・地域性)を意識して企画を設計します。
  • 産地の新挑戦(例:新しい果樹や栽培法)は、直売所と連動したPRで問合せが増える好循環を生みます。露出後の受け皿(在庫、FAQ、購入導線)まで準備が必要です。
  • 生活者の投稿(UGC)を促す仕掛けを用意。写真映えする並べ方、可愛いパッケージ、ハッシュタグの設計は無料の宣伝力になります。

新潮流7:軸は一本、枝葉は多層に

  • 「地域=〇〇」のわかりやすい軸をぶらさない。主軸(例:いちご)の品質と体験を磨き、ジャム・ドライ・スイーツなどの枝葉で裾野を広げます。
  • コラボで新しい文脈を獲得。菓子店、醸造、レストランとの共同開発は、異なる客層への橋をかけ、信頼を相互輸送します。
  • 生産者名がブランドになる設計。こだわりの生産者を“指名買い”できる売場づくりは、価格より価値で選ばれる土壌を育てます。

実践ロードマップ(6ステップ)

    1. ブランド軸の定義:何を“象徴”にするか(産地、技術、姿勢)。インナー・アウターで同じ言葉にする。
    2. ステークホルダーの可視化:顧客、販売者、メディア、協業先の期待と不満を棚卸し。
    3. ストーリーと証拠の整備:3つの証拠(原料・手間・結果)を具体化し、QRや売場ポップに落とす。
    4. 商品・梱包の試作:小ロットで複数案を並行テスト。手に取りやすさとギフト適性を検証。
    5. 直売所での観察と対話:毎朝の情報共有、週次の売場レビュー、月次での改善サイクル。
    6. 露出と受け皿の設計:メディア発信の前に在庫・導線・FAQを整え、問い合わせ対応を標準化。

測るべき指標

  • 指名買い率(生産者名やブランド名の指定購入比率)
  • リピート率/定期便継続率
  • 売場滞在時間/接客から購入までの転換率
  • 原価・歩留まり改善と廃棄削減の量(サステナ価値の見える化)

インナーブランディングの要点

  • 現場が語れる「共通フレーズ」を決める。誰が話しても伝わる言葉がブランドの骨格になります。
  • 朝礼・終礼で売場の気づきを共有し、次の一手を合意形成。小さな改善の累積が大きな差を生む。
  • 標準(ガードレール)を整備。品質基準、並べ方、値付けのルールがブレを防ぎ、顧客体験を安定させます。

さいごに

ブランドの未来は、作り手・売り手・買い手が線でつながり、価値を共に育てる「関係性のデザイン」にあります。価格ではなく価値で選ばれるブランドを、地域から育てていきましょう。皆さんの企業や産地の魅力がより多くの人々に届き、未来の標準になることを心から応援しています。

後編:やまうち農園の挑戦 ~6次産業化で広がる可能性~

はじめに

「やまうち農園株式会社」は、宮城県山元町にあるいちじくを中心に果樹を栽培する農園です。特に「完熟いちじく」へのこだわりを持ち、多品種のいちじくを栽培しています。やまうち農園の株式会社 専務取締役 山内裕貴さんと常務取締役 山内理恵さんに、6次産業化への挑戦や完熟いちじくへの思いについてお話を伺いました。

後編では、6次産業化への挑戦と商品開発の裏側、そしてこれから6次産業化を目指す生産者へのメッセージをお届けします。

6次産業化への挑戦

Q.6次産業化に挑戦しようとしたきっかけは何ですか?

完熟いちじくは非常においしいのですが、熟しすぎたり割れてしまったりしたものは流通に乗せられません。でも、それらは決して悪いものではなく、むしろ一番おいしい状態です。これを何かに活用できないかと考えたのがきっかけです。

最初は補助金を活用しながら、いちじくのセミドライやグラッセを作りました。次にお菓子作りに挑戦しようとしたとき、素人が作ったものを売るわけにはいかないと考えました。そこで、国際ホテルのパティシエの方に教えていただき、コラボ商品を作ることができました。これが定番商品となり、6次産業化の大きな一歩となりました。

また、宮城県の郷土食として「いちじくの甘露煮」があります。こちらは、昔からの家庭の味ですが、年々家庭で作る方が減りました。そこで、バイヤーの方に相談しながら「いちじくの甘露煮」を作りました。宮城県の食文化を大切にしたいという思いから出来上がりました。

Q.商品開発で苦労した点は何ですか?

やはり、素人だけで商品を作るのは難しいということです。例えば、いちじくのグミを作る際も、ゼライスさんや県の方々、地元の高校生たちの協力があったからこそ実現しました。グミは特に技術が必要で、解けない、固まる、賞味期限が長いといった条件を満たすのは簡単ではありません。プロの技術を借りることで、安心して提供できる商品が完成しました。

また、商品開発を進める中で「できること」と「できないこと」を見極めることが重要だと感じました。自分たちだけで無理をせず、技術を持った方々に頼ることで、品質の高い商品を作ることができます。

6次産業化を目指す生産者の方へ

Q.6次産業化に取り組む生産者へのメッセージをお願いします。

6次産業化を目指すなら、まずは行政や県の支援を頼ることをお勧めします。自分たちだけで完結しようとせず、技術を持った方々に教えてもらうことが大切です。私たちも、国際ホテルのパティシエやゼライスさんなど、プロの方々に教えていただいたおかげで、しっかりした商品を作ることができました。

また、宮城県には「農産漁村なりわい課」など、6次産業化をサポートしてくれる機関があります。やりたいことがあるなら、まずは相談してみてください。一人で悩む必要はありません。技術を持った方々や行政のサポートを受けることで、きっと道が開けるはずです。


 

完熟いちじくへのこだわりや、プロの技術を取り入れた商品開発は、地域資源を活用した新たな価値創造の好例です。

これから6次産業化に挑戦しようと考えている方は、ぜひやまうち農園の取り組みを参考にしてみてください。地域の魅力を最大限に活かし、次世代に誇れる商品を一緒に作り上げていきましょう。

【インタビュー企業関連HP】

HP: https://yamauchinouen.weebly.com/

Instagram:@yamauchinoen (出店情報など掲載されています!)