目次
はじめに
「やくらい土産センター」は宮城県加美郡加美町にある、やくらい交流施設群の1つとして平成6年に誕生した農林産物直売施設です。地元農家の直売組織「さんちゃん会」(じいちゃん・ばあちゃん・かあちゃんの三人の“ちゃん”が由来)が支え、採れたての産物で棚を満たすライフスタイルが地域に根づいています。今回は、事務長の早坂さんに、支援事業での学びや直売所のこれからについて伺いました。

支援事業参加の背景と、現場で生きる学び
Q.支援事業に参加したきっかけは何ですか?
普及センターの紹介がきっかけです。ちょうど既存商品の見直しや売場の強化を考えていた時期でした。例えば、カップアイスをもっと売っていこうと思い、パッケージをおしゃれに「英語表記で今風に」と検討していました。関西の会社の方にも意見を求めましたが、「今のデザインの良さも活かせる」との助言であえて現行を採用しました。流行に流されすぎない判断ができたのは大きかったです。
Q.実際に参加して得たことは?
レイアウトや商品構成、目標の立て方まで、組合長を中心に多くを学びました。地域内にも声がけして新たにさんちゃん会に参加いただくなど、ネットワークづくりも前進。貸農園(コミュニティガーデン)の構想など、「地域と一緒に畑を育てる」動きも芽生えています。

運営の核は“人”―会員とのコミュニケーション
Q.事業を続けるうえで大切にしていることは?
会員さんとのコミュニケーションを何より大切にしています。2~3日顔を見ないと心配になります。1週間来られないと入院されていることも…。若い頃からの付き合いで、私にとっては“職場の父母”のような存在です。「初物だから食べな」と声をかけてもらうこともあります。こうした人間関係が直売所の土台ですね。

直売所のこれから―若い世代と加工の担い手づくり
Q.今後、直売所を伸ばしていくための課題と方向性は?
高齢化が進み、車で来られないお客様も増えています。一方、若い方は生鮮野菜の購買が少ない傾向もあります。加工品のニーズはあるのですが、加工を担う会員が減っているのが悩みです。町でも6次化支援はありますが、高齢の方にはハードルが高い。新しいことに挑戦する若い担い手の育成・受け入れが急務です。
直売所に加工場が併設されているのは本当に恵まれた環境です。設備は整っているので、惣菜やジャムなどに挑戦したい方にぜひ入っていただきたい。バックヤードで出る“痛み始めの野菜”なども工夫次第で価値に変えられます。ご年配の方向けの惣菜はもちろん、若い方向けの新しい商品も増やしたいですね。
食堂とジェラート―地元食材の“おいしい”活用
Q.食堂・ジェラートを始めた理由とこだわりは?
食堂は当初、地域にジンギスカンのお店があったので差別化で牛のステーキ・焼肉からスタートし、その後ラーメンへと転換しました。ジェラートは地元の牛乳と地元食材にこだわっています。ブルーベリー(自家製ジャム使用)、枝豆、醤油、わさび、いちじく、ばっけ(“ふきのとう”—4月後半~5月)など、旬のものを季節限定で味を楽しんでもらえるよう工夫しています。一番人気はブルーベリー。実は“豆腐”フレーバーも隠れたおすすめです。
以前は1つのフレーバーを長く提供できましたが、今は採る方も少なく食材調達が難しいです。また加工をしてくださる方も減っています。そのため人気の季節フレーバーがすぐに終わってしまうこともありますが、無理に広げず、地元の旬と品質を優先して続けています。


人材・採用のリアル―地域で続けるために
Q.人材面の状況はいかがですか?
パートさんの確保が難しく、賃金も上がっています。温泉や食堂もハローワーク経由で採用しますが、定着が課題です。若い方は都市部へ出る傾向が強いですが、Uターンで戻ってきた30代半ばの方など、明るい兆しもあります。加工・調理を担える若い方が活躍できる場は用意できますので、是非興味がある方は挑戦していただきたいです。
6次化を目指す方へ
Q.これから6次化を目指す生産者へメッセージをお願いします。
若い方にぜひ挑戦してほしいです。直売所の加工場という“舞台”は既にあります。資源は揃っていますから、痛み始めの野菜の活用など、アイデア次第でいくらでも価値化できます。まずは遠慮なく扉を叩いてください。一緒に“地域の食”を次の世代につないでいきましょう。
やくらい土産センターさんちゃん会は、直売・加工・食の場を一体で運営しながら、地域の人と資源をつなぐハブとして進化してきました。高齢化や人手不足、物価高など課題は多いものの、「場」「人」「素材」を組み合わせて価値を生み出す余地は大きいです。これから6次化に踏み出すみなさんにとって、地域の強みを活かすヒントになりましたら幸いです。
[インタビュー企業]
やくらい土産センター・山の幸センターHP