目次
はじめに
6次化で最も大切なのは、「一度買ってくれたお客様に、もう一度買ってもらうこと」です。新規顧客の獲得には時間もコストもかかりますが、リピーターは少ない労力で安定した売上を生み出してくれます。
そのために必要なのが顧客データです。「誰が」「何を」「いつ」買ったかを記録し、適切なタイミングで再アプローチする。難しいシステムは不要です。紙のノート、スプレッドシート、LINE公式アカウントなど、身近なツールで今日から始められます。
本コラムでは、小さな直売所やマルシェでも実践できる、顧客データの集め方と活かし方を具体的にお伝えします。
なぜ顧客データが必要なのか
リピーターがもたらす3つの価値
① 安定した売上
- 新規顧客:来るかどうか分からない
- リピーター:定期的に買ってくれる
② 口コミ・紹介
- 満足したリピーターは、友人・家族に勧めてくれる
- SNSでシェアしてくれる可能性も高い
③ 商品改善のヒント
- 何度も買ってくれる人の声は、商品開発の宝庫
- 「こんな商品があったら」という要望が次のヒットにつながる
データがないと起こること
- 誰がリピーターか分からない
- 新商品の案内ができない
- 季節商品の販売時期を逃す
- 常連さんに特別感を提供できない
顧客データは、リピーター育成の土台です。
集めるべき顧客データの基本
最初から完璧を目指す必要はありません。まずは最低限の情報から始めましょう。
【必須】最低限集めたい情報
- 名前(ニックネームでもOK)
- 連絡先(メール、LINE、電話のいずれか)
- 購入日
- 購入商品
【推奨】余裕があれば集めたい情報
- 購入のきっかけ(SNS、紹介、通りがかりなど)
- 好みや要望(甘さ控えめが好き、ギフト用途など)
- 誕生月(バースデー特典を送れる)
- 住所(地域別の傾向分析、DM送付)
集めてはいけない情報
- 必要以上の個人情報(年収、家族構成など)
- 本人の同意なく第三者に提供する前提の情報
ポイント:「何のために使うか」を明確にし、お客様に説明できる範囲で集める
販路別顧客データの集め方
【直売所・道の駅】
課題:委託販売のため、購入者と直接接点がない
解決策①:QRコードでLINE登録を促す
- 商品パッケージやPOPにQRコードを貼る
- 「新商品情報やお得情報をLINEでお届け」と案内
- 登録特典(次回10%オフクーポンなど)をつける
解決策②:アンケートカードを同梱
- 「ご感想をお聞かせください」と小さなカードを入れる
- QRコードまたはメールアドレスで回答を受け付ける
- 回答者に次回使えるクーポンをプレゼント
解決策③:レジ横にチラシ・名刺を置く
- SNSアカウント、LINE、ホームページのURLを記載
- 「フォローで限定情報をお届け」と訴求
【マルシェ・イベント出店】
メリット:対面なので、直接声をかけられる
方法①:購入時に声かけ
- 「次回の出店情報をLINEでお送りしてもいいですか?」
- その場でQRコードを読み取ってもらう
方法②:名刺交換
- 購入者に名刺を渡し、「よかったら連絡先を教えてください」
- 簡単なメモ用紙に名前・連絡先を書いてもらう
方法③:スタンプカード
- 「3回購入で1個プレゼント」などの特典
- カードに名前・連絡先欄を設け、初回に記入してもらう
方法④:試食・プレゼント企画
- 「アンケートに答えてくれた方に試食プレゼント」
- 簡単な質問(好みの味、購入頻度など)と連絡先を記入してもらう
【EC(ネット販売)】
メリット:購入時に自動的にデータが蓄積される
活用できるデータ
- 氏名、住所、メールアドレス
- 購入日、購入商品、購入金額
- リピート回数、購入間隔
追加で集める方法
- 購入後のサンクスメールで簡単なアンケートを依頼
- レビュー投稿を促す(特典付き)
- LINE登録を案内(「次回使える500円クーポン」など)
【卸(小売店・飲食店経由)】
課題:エンドユーザーと直接接点がない
解決策①:店頭POPにQRコード
- 卸先の店舗に「生産者の情報はこちら」とQRコード付きPOPを設置してもらう
解決策②:パッケージにSNS情報
- Instagram、Facebook、LINEのアカウント名を記載
- 「作り手の日常を発信中」と興味を引く
解決策③:卸先との情報共有
- 「お客様の声があれば教えてください」と依頼
- 売れ筋商品、要望、クレームなどを定期的にヒアリング
顧客データの管理方法
【初級】紙のノート・カード
メリット
- すぐ始められる
- デジタルが苦手でもOK
デメリット
- 検索しにくい
- 紛失リスク
使い方
- 1人1ページで記録
- 購入日、商品、メモを時系列で追記
【中級】スプレッドシート(Excel・Googleスプレッドシート)
メリット
- 無料で使える
- 並び替え・検索が簡単
- 複数人で共有できる(Googleスプレッドシート)
デメリット
- 入力の手間がかかる
- 自動化には限界がある
基本の項目例
| 顧客ID | 名前 | 連絡先 | 初回購入日 | 最終購入日 | 購入回数 | 購入商品 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 001 | 佐藤さん | sato@example.com | 2025/10/5 | 2026/1/12 | 3回 | ジャム、シフォン | 甘さ控えめ好き |
| 002 | 鈴木さん | LINE: suzuki123 | 2025/11/20 | 2025/11/20 | 1回 | ピクルス | ギフト用途 |
運用のコツ
- 販売後、その日のうちに入力
- 月1回、データを見直して傾向を確認
【上級①】LINE公式アカウント
メリット
- 顧客が使い慣れている
- メッセージ配信が簡単
- クーポン、予約機能も使える
デメリット
- 月200通まで無料、それ以上は有料(2026年1月時点)
- 登録してもらう工夫が必要
活用方法
- 友だち登録を促す
- QRコード、チラシ、SNSで案内
- 登録特典(クーポン、限定情報)をつける
- セグメント配信
- 「ジャム購入者」「マルシェで会った人」など、タグで分類
- 関心に合わせた情報を送る
- リッチメニュー活用
- 商品一覧、予約、お問い合わせをボタン化
- アンケート機能
- 新商品の意見募集、満足度調査
【上級②】CRM・顧客管理ツール
例:kintone、Salesforce、HubSpot、Zoho CRM
メリット
- 高度な分析・自動化が可能
- 購入履歴、メール配信、タスク管理を一元化
デメリット
- 月額費用がかかる(数千円〜数万円)
- 設定・運用に学習コストがかかる
向いている事業者
- 顧客数が数百人以上
- 複数スタッフで管理
- EC・卸・直売など複数販路を統合管理したい
顧客データの活かし方
データを集めただけでは意味がありません。リピート購入につながる行動を起こしましょう。
① 定期的な情報発信
頻度の目安
- 月1〜2回(多すぎると嫌がられる)
- 季節の変わり目、新商品発売時
配信内容の例
- 新商品のお知らせ
- 季節限定商品の販売開始
- マルシェ・イベント出店情報
- レシピ・食べ方の提案
- 生産者の日常、畑の様子
ポイント
- 売り込みばかりにしない
- 「役立つ情報」「楽しい情報」を8割、「販促」を2割
② リピーター限定の特典
例
- 2回目購入で10%オフ
- 誕生月にバースデークーポン
- 常連さん限定の先行販売
- 「いつもありがとうございます」の手書きメッセージ
効果
- 特別感が生まれ、ファン化が進む
- 「また買おう」という動機づけになる
③ 購入サイクルに合わせたアプローチ
例
- ジャムを買った人に、1ヶ月後「そろそろなくなる頃では?」とメッセージ
- 季節商品を買った人に、翌年の同時期に「今年も販売開始しました」
やり方
- スプレッドシートで「最終購入日」を管理
- 30日後、60日後など、タイミングを見て連絡
④ アンケート・ヒアリング
質問例
- どの商品が一番好きですか?
- こんな商品があったら買いたいですか?
- 改善してほしい点はありますか?
- どこで知りましたか?
活用方法
- 新商品開発のヒントにする
- 人気商品を増産、不人気商品を見直し
- お客様の声をSNSやPOPで紹介(許可を得て)
⑤ セグメント別のアプローチ
セグメント例
- 初回購入者:「ありがとうございました。次回使えるクーポンです」
- リピーター:「いつもありがとうございます。新商品をご案内」
- 休眠顧客(3ヶ月以上購入なし):「お久しぶりです。季節限定商品が出ました」
効果
- 一斉配信より、反応率が高い
- 顧客に「自分に合った情報」と感じてもらえる
よくある失敗と対策
失敗①:データを集めたまま放置
対策
- 月1回、必ず何かしらの配信をする
- カレンダーに「顧客対応日」を設定
失敗②:売り込みばかりで嫌がられる
対策
- 「役立つ情報8割、販促2割」を意識
- レシピ、生産者の日常、季節の話題など、楽しめる内容を混ぜる
失敗③:個人情報の管理が甘い
対策
- スプレッドシートにパスワードをかける
- 紙の記録は鍵付き引き出しに保管
- 第三者に見せない、勝手に使わない
失敗④:データ入力が続かない
対策
- 販売後すぐに入力する習慣をつける
- 入力項目を最小限にする(名前、連絡先、購入日、商品だけでもOK)
今日から始める5ステップ
ステップ1:目標を決める
- 「3ヶ月で顧客データ30件」など、具体的な数字を設定
ステップ2:ツールを選ぶ
- 初心者:紙のノートまたはスプレッドシート
- 慣れてきたら:LINE公式アカウント
ステップ3:集め方を決める
- QRコード、アンケートカード、声かけなど、自分に合った方法
ステップ4:特典を用意
- 登録・記入してもらうための「お礼」を考える(クーポン、試食など)
ステップ5:月1回、必ず連絡する
- 新商品、出店情報、レシピなど、何でもOK
- 「忘れられない」ことが大切
さいごに
リピーター育成は、「関係を続ける」ことです。一度買ってくれたお客様に、忘れられないように、定期的に顔を出す。新商品を案内する。感謝を伝える。
難しいシステムは不要です。紙のノート、スプレッドシート、LINEで十分。大切なのは、小さく始めて、続けること。
まずは、10人の連絡先を集めることから。その10人が、あなたの事業を支える最初のファンになります。
新規顧客を追いかけるより、目の前のお客様を大切に。
その積み重ねが、持続可能な売上を生み出します。