目次
はじめに
6次産業化で商品を作ったら、次は「どこで売るか」が最大の課題です。直売所、EC、卸、マルシェ…それぞれに手数料も客層も求められる商品特性も違います。「とりあえず全部やってみる」では、労力ばかりかかって利益が残りません。
大切なのは、各販路の収益構造を理解し、自社の商品・体制に合った販路ミックスを設計することです。本コラムでは、主要4販路の特性を整理し、どう組み合わせれば持続可能な売上が作れるかを、現場目線でお伝えします。
販路選択の基本的な考え方
販路を選ぶ前に、まず自社の状況を整理しましょう。
① 自社の現状を把握する
- 生産能力:週・月にどれだけ作れるか
- 在庫の持ち方:受注生産か、作り置きか
- 賞味期限:短い(数日)か、長い(数週間〜数ヶ月)か
- 価格帯:単価が高いか、低いか
- 人員体制:自分一人か、家族・スタッフがいるか
- 物流対応:発送作業ができるか、配送コストをどう吸収するか
② 販路ごとの「相性」を見極める
すべての販路が自社に合うわけではありません。商品特性・体制・目標利益に応じて、優先順位をつけることが成功の鍵です。
主要4販路の特性と収益構造
【販路①】直売所・道の駅
特徴
- 地元客・観光客が中心
- 対面販売ではなく、委託販売が主流
- 商品を並べたら、あとは売場に任せる
収益構造
- 手数料:売上の10〜20%(施設により異なる)
- 価格設定:自分で決められる
- 入金サイクル:月1〜2回の精算が一般的
求められる商品
- 地域性・季節感がある
- パッケージが目を引く(対面説明がないため)
- 賞味期限が比較的長い(数日〜1週間以上)
- 価格帯:500〜1,500円程度が中心
メリット
- 初期投資が少ない(棚代・出店料が不要または低額)
- 自分で接客しなくてよい
- 地元での認知が広がる
デメリット
- 売れ残りリスクは自己負担
- 陳列スペースが限られる
- 他の出品者との競合が激しい
向いている事業者
- 生産量が安定している
- パッケージや見せ方に工夫ができる
- 定期的に商品を補充できる体制がある
【販路②】EC(ネット販売)
特徴
- 全国の顧客にリーチできる
- 24時間365日、販売機会がある
- 自社サイト、楽天・Yahoo!などのモール、BASE・STORESなどの簡易ECがある
収益構造
- 手数料:
- モール型(楽天・Yahoo!):売上の5〜15%+月額固定費
- 簡易EC(BASE・STORES):売上の3〜5%程度
- 自社サイト:決済手数料のみ(3〜4%)
- 送料:顧客負担か、自己負担か(または一部負担)
- 梱包資材費:1件あたり50〜200円程度
求められる商品
- 写真・説明文で魅力が伝わる
- 配送に耐える(割れ・潰れにくい)
- 賞味期限が長い、または冷凍・冷蔵配送に対応
- 価格帯:送料を考慮すると2,000円以上が望ましい
メリット
- 地理的制約がない
- リピーター育成がしやすい(メール・LINE配信)
- 顧客データが蓄積できる
デメリット
- 集客に時間とコストがかかる(SNS・広告が必要)
- 梱包・発送作業が発生
- 送料負担が大きい(特に単品・小ロット)
向いている事業者
- 商品ストーリーや世界観を伝えたい
- リピーター育成に力を入れたい
- 発送作業を定期的にこなせる体制がある
【販路③】卸(小売店・飲食店への販売)
特徴
- まとまった数量を定期的に納品
- 小売店・カフェ・レストランなどが取引先
- 自分で売る手間がかからない
収益構造
- 卸値:小売価格の50〜70%が一般的
- 例:小売価格1,000円 → 卸値600〜700円
- 支払いサイト:月末締め翌月末払いなど、入金まで時間がかかる
- 返品リスク:契約により異なる
求められる商品
- 安定供給ができる(欠品が許されない)
- 賞味期限が長い
- ロット対応ができる(週◯個、月◯個など)
- 品質が均一
メリット
- 一度取引が始まれば、安定した売上が見込める
- 自分で販売しなくてよい
- ブランド認知が広がる
デメリット
- 粗利率が低い(直売の半分程度)
- 生産計画・在庫管理が必須
- 取引先の倒産・契約終了リスク
向いている事業者
- 生産能力に余裕がある
- 安定供給できる体制が整っている
- 粗利率が低くても、量でカバーできる
【販路④】マルシェ・イベント出店
特徴
- 対面で直接販売
- 顧客の反応がリアルタイムで分かる
- 週末・月1回など、不定期開催が多い
収益構造
- 出店料:1回3,000〜10,000円程度
- 価格設定:自分で決められる
- 売上:当日の天候・集客に左右される
求められる商品
- その場で試食・説明ができる
- 持ち帰りやすい(重すぎない、壊れにくい)
- 価格帯:500〜2,000円程度(その場で買いやすい金額)
メリット
- 顧客と直接対話できる(ファン化しやすい)
- 商品の反応を即座に確認できる
- SNSフォロワー獲得のチャンス
デメリット
- 準備・当日対応・片付けに時間がかかる
- 天候・集客に売上が左右される
- 出店料が固定費としてかかる
向いている事業者
- 商品のストーリーを直接伝えたい
- テスト販売・新商品の反応を見たい
- ファンづくり・ブランディングを重視
販路別の利益率を比較する
同じ商品でも、販路によって手元に残る利益は大きく変わります。
例:シフォンケーキ1個(単位原価470円)
| 販路 | 販売価格 | 手数料・経費 | 粗利益 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| 直売所 | 800円 | 120円(手数料15%) | 210円 | 26% |
| EC | 800円 | 190円(手数料5%+送料150円) | 140円 | 18% |
| 卸 | 560円 | 0円 | 90円 | 16% |
| マルシェ | 800円 | 50円(出店料を1個あたりに按分) | 280円 | 35% |
※送料・出店料の按分方法により変動します
ポイント
- 粗利率が高い=良い販路ではありません
- 卸は粗利率が低くても、まとまった数量が安定的に売れる
- ECは送料負担が大きいが、全国にリーチできる
- マルシェは粗利率が高いが、労力と時間がかかる
販路ミックスの設計
複数の販路を組み合わせることで、リスク分散と売上最大化を図ります。
① 成長段階に応じた販路戦略
【立ち上げ期】
- 優先販路:直売所、マルシェ
- 目的:顧客の反応を見る、認知を広げる、商品を磨く
- 売上目標:月5〜10万円
【成長期】
- 優先販路:直売所+EC、または卸1〜2社
- 目的:リピーター育成、安定供給の仕組み作り
- 売上目標:月20〜50万円
【安定期】
- 優先販路:卸中心+EC、直売所は補完的に
- 目的:効率化、利益率の向上
- 売上目標:月50万円以上
② 販路ミックスの例
パターンA:少量多品種型(個人事業者)
- 直売所 50%
- マルシェ 30%
- EC 20%
→ 自分のペースで作り、対面販売でファンを増やす
パターンB:安定供給型(法人・グループ)
- 卸 60%
- 直売所 30%
- EC 10%
→ 卸で安定売上を確保し、直売・ECでブランド育成
パターンC:EC特化型
- EC 80%
- マルシェ 20%(認知・ファン獲得)
→ 全国展開を目指し、リピーター育成に注力
販路開拓の実務ステップ
① 直売所・道の駅への出品
- 施設に問い合わせ:出品条件、手数料、精算サイクルを確認
- サンプル持参:商品を見せて、担当者と相談
- 出品契約:必要書類(営業許可証のコピーなど)を提出
- 初回納品:少量から始め、売れ行きを観察
- 定期補充:売れ筋を増やし、動きの悪い商品は入れ替え
② ECサイトの立ち上げ
- プラットフォーム選定:BASE・STORES(簡単)、楽天・Yahoo!(集客力)、自社サイト(自由度)
- 商品撮影:自然光で、複数アングル
- 商品説明文:原材料、サイズ、賞味期限、保存方法、食べ方を明記
- 配送設定:送料、配送方法、梱包方法を決める
- 集客:SNS、ブログ、広告で認知を広げる
③ 卸先の開拓
- ターゲット選定:自社商品と相性の良い店舗をリストアップ
- アポイント:電話またはメールで商談の約束
- サンプル提供:試食・試用してもらう
- 条件交渉:卸値、納品頻度、支払いサイト、返品条件
- 契約・初回納品:書面で条件を確認し、納品開始
④ マルシェ・イベント出店
- イベント情報収集:自治体、商工会、SNSで情報を探す
- 出店申込:主催者に連絡し、出店料・条件を確認
- 準備:テント、テーブル、POP、釣銭、梱包資材
- 当日販売:笑顔で接客、名刺・チラシ・SNS案内を配布
- 振り返り:売上、顧客の反応、改善点を記録
販路ごとの成功ポイント
直売所で売れるコツ
- 目立つパッケージ:棚に並んだとき、手に取られやすいデザイン
- POP活用:「地元◯◯産」「今週限定」など、一言で価値を伝える
- 定期補充:欠品させない、鮮度を保つ
ECで売れるコツ
- 写真の質:プロ並みでなくても、明るく清潔感のある写真
- レビュー獲得:初回購入者に「感想をお願いします」と声かけ
- リピート施策:メルマガ、LINE、次回クーポンでつなぎ止める
卸で信頼を得るコツ
- 納期厳守:約束した日時に必ず納品
- 品質の均一性:ばらつきを最小限に
- コミュニケーション:売れ行きを聞き、改善提案をする
マルシェで印象を残すコツ
- 試食・試飲:味を知ってもらうのが最強
- ストーリーを語る:「この野菜は◯◯さんの畑で」など、背景を伝える
- 次につなげる:SNSフォロー、次回出店日の案内
よくある失敗パターンと対策
失敗①:すべての販路に手を出して疲弊
対策:まずは1〜2販路に絞り、仕組みを作ってから拡大
失敗②:粗利率だけで販路を選ぶ
対策:労力・時間・安定性も含めて総合判断
失敗③:在庫を持ちすぎて廃棄が増える
対策:受注生産、または少量多頻度生産で調整
失敗④:顧客データを取らずに売りっぱなし
対策:どの販路でも、リピートにつながる導線を作る(LINE登録、次回案内など)
販路開拓のチェックリスト
新しい販路を始める前に、以下を確認しましょう。
- 手数料・経費を含めた粗利益を計算したか
- 生産能力・納品頻度に無理がないか
- 賞味期限・配送方法は対応可能か
- 顧客層と自社商品の相性は良いか
- リピート・ファン化の導線を設計したか
- 撤退基準を決めたか(◯ヶ月やって売上◯万円以下なら見直し)
さいごに
販路開拓は、「選ぶ」ことと「組み合わせる」ことの両方が大切です。すべての販路に全力投球するのではなく、自社の商品・体制・目標に合った販路を見極め、段階的に広げていく。
まずは1つの販路で小さく成功体験を作り、そこで得た学びを次の販路に活かす。この積み重ねが、持続可能な売上を生み出します。
売れる場所を増やすのではなく、売れる仕組みを作る。
その視点で、あなたの販路戦略を一歩ずつ前に進めていきましょう。